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DATE : 2018.10.15

乳がん症状の特徴とは?早期発見のためにできること

乳がんは日本人女性においてもっとも患者数の多いがんであり、その数はいまも増え続けています。一方、早期の発見と治療で治りやすいがんでもありますので、乳がんのことをよく理解して、乳がん検診を受けるなど対策をしておくことが大切です。まずは乳がんとはどのような病気なのかを知るために、医師の監修のもと乳がんの症状や特徴について解説します。

監修:平松レディースクリニック 院長 平松秀子先生 

乳がんとはどのような病気?

乳がんとは乳房(乳腺)にできる悪性腫瘍のことをいい、女性がかかるがんの中で、もっとも患者数が多い病気です。日本における乳がん患者数は増加していますが、他のがんに比べて予後が良い、治る確率の高い病気です。

乳がんの構造と乳がん



乳房には赤ちゃんに与えるための母乳を分泌させるという役割があり、その役割を担っているのが乳腺(乳管・小葉)です。乳房の中には脂肪と乳腺が混在しており、乳腺は乳房の脂肪の中にあり、乳頭(乳首)を中心に放射線状に広がっています。

その乳腺で変異した異常な細胞が分裂を始めて増殖が止まらなくなる悪性腫瘍が乳がんです。乳がんのほとんどは乳腺の乳管に発生しますが、小葉の部分でもわずかですが発生することがあります。


乳がんのステージとは

乳がんのステージ(病期)は「しこりの大きさや乳房内での広がり具合」「リンパ節の転移状況」「他の臓器への転移の有無」により分類されます。

【ステージ 0期】

がん細胞が乳管、小葉の中にとどまっており、転移や再発はほとんどない。「非浸潤がん」と呼ばれる。

【ステージI期】

しこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節には転移していない。乳管や小葉の壁を破っており、ステージI期以降は「浸潤がん」と呼ばれる。

【ステージⅡ期】IIA期、IIB期に分けられる

ステージⅡA期:しこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節への転移があり、そのリンパ節は周囲の組織に固定されず可動性がある。またはしこりの大きさが2~5cmでわきの下のリンパ節への転移がない場合。

ステージⅡB期:しこりの大きさが2~5cmで、わきの下のリンパ節への転移があり、そのリンパ節は周囲の組織に固定されず可動性がある。またはしこりの大きさが5cm以上で、わきの下のリンパ節への転移がない場合。

【ステージⅢ期】ⅢA期、ⅢB期、ⅢC期に分けられる

ステージⅢA期:しこりの大きさが5cm以下で、わきの下のリンパ節に転移があり、そのリンパ節は周辺の組織に固定されていたり、リンパ節が互いに癒着していたりする状態。またはわきの下のリンパ節転移がなく胸骨の内側のリンパ節に転移がある場合。
あるいは、しこりの大きさが5cm以上で、わきの下または胸骨の内側のリンパ節への転移がある場合。

ステージⅢB期:しこりの大きさやわきの下のリンパ節へ転移は問わず、しこりが胸壁に固定されていたり、皮膚に浮腫や潰瘍を形成したり(炎症性乳がんを含む)している。

ステージⅢC期:しこりの大きさは問わず、わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移のある場合。あるいは鎖骨上のリンパ節に転移がある場合。

【ステージIV期】

しこりの大きさやリンパ節転移の状況にかかわらず、離れた臓器に転移している場合。乳がんが転移しやすい臓器は骨、肺、肝臓、脳など。



早期の乳がんについて

非浸潤がんと呼ばれる0期、および浸潤がんでもステージI期のものは早期がんであり、多くが完治するといわれています。早期の乳がんでは自覚症状が感じられないことも多く、知らないうちに、がん細胞が時間の経過とともに増殖し、浸潤がんとなり、血管やリンパ管へと広がってしまうこともあります。

早期の段階で気がつくためには、「月1おっぱいチェック」と定期的な乳がん検診を行うことが肝心です。
乳がんを発症してから、進行に伴い、乳房のしこり、腋窩リンパ節の腫脹などの症状がみられるようになります。


乳がん末期について

乳がんの末期とは、がんが乳房以外の他の臓器にまで転移しているステージⅣ期のことをいいます。
さらに進んで、がんが他の臓器にまで転移すると、その臓器を障害することになります。特にがんが骨に転移すると、激しい痛みを伴います。 

乳がんにかかった乳房の症状は?

ここでは乳がんにかかったときどのような症状が表れるのか見ていきましょう。また、良性の疾患の症状についてもあわせて説明します。

乳がんの乳房にみられる症状

-しこり

乳がんのしこりの痛みはほとんどありません。自身で触ってみたときの感じは「かたい」「デコボコしていて形が整っていない」という印象があります。

-乳頭分泌物

乳頭(乳首)から分泌物がみられます。無色や白色の場合は良性であることがほとんどです。赤い血液や、黒っぽい血液が乳頭から分泌される場合は、乳がんの心配もありますので、精密検査が必要になります。

-乳頭のひきつれ・くぼみ

乳房の皮膚にひきつれやくぼみが認められるときや、乳頭のひきつれが認められるときは、皮膚や乳頭の下に乳がんが潜んでいる可能性があります。

-腋窩(わき)のしこり・はれ

乳がんがリンパ節に転移して腫れている場合があります。超音波(エコー)検査である程度診断できます。もしかしたら別の病気、例えばリンパ節自体のがんの可能性(悪性リンパ腫)もあります。

-乳房の左右差

急に左右差が認められるようになった場合は、乳がんとは限りませんが、乳房に病気が潜んでいることもあります。

-石灰化

石灰化はカルシウム成分のことです。しこりとして感じることのできない石灰化はマンモグラフィで発見できます。多くは良性ですが、乳がんと関係するものもあります。

良性の症状

しこりや石灰化が発見されたからといって、それらはすべて乳がんではありません。良性の疾患の方が多いので、必要以上にこわがらないでも大丈夫です。

良性のしこりとしては、乳腺症、のう胞(液体のたまり)、線維腺腫、葉状腫瘍などがあげられます。いずれにしれも、しこりを感じたときはすぐに受診しましょう。

また、乳房はホルモンの影響で痛みを感じたり、張りを感じたりします。痛みや張りも乳がんと直接関係ないことがほとんどですが、自分で判断するのは難しいこともあるので、気になることがあるときは受診しましょう。 

早期発見とセルフチェックについて

乳がんの早期から末期、病期によっての症状を説明してきましたが、乳がんの進行を防ぎ、完治の可能性を上げるためには、何よりも定期的な乳がん検診とセルフチェックが不可欠です。

乳がん検診

医師による視触診、エコー(超音波)検査、マンモグラフィ検査を組み合わせるのが乳がん検診の基本です。若い人や乳腺が発達している人は、エコー(超音波)の方がしこりの病巣を発見しやすい傾向があります。

マンモグラフィはしこりなどの他、石灰化の発見を得意としています。

セルフチェックの方法

乳腺科などでの乳がん検診は定期的に受けると同時に、セルフチェックは月に1回行いましょう。月経開始日から5〜7日目の乳房がやわらかい時期に行うのがベストなタイミングです。

【チェック1】

鏡に向かい、両方の腕を上げて、乳房の形に変形がないか、左右差が大きくなっていないかチェック。

【チェック2】

乳房の表面を、指をそろえて指の腹でうずまきを描くように(「の」の字を描くように)さわってしこりがないかチェック。また、上から下、外側から内側など指をすべらせてチェック。

【チェック3】

仰向けになって、しこりがないかチェック。

詳しくは、「月1おっぱいチェック」を参考にして、大切なおっぱいを守りましょう。

乳がんの構造、ステージ、症状など基本的な情報をご紹介しました。乳がんに関する正しい知識を得たら、まずはセルフチェックを習慣にしてみてください。

PROFILE

【監修】平松秀子先生HIDEKO HIRAMATSU

平松レディースクリニック院長
東京女子医科大学卒業。慶應義塾大学大学院医学研究科修了。慶應義塾大学医学部放射線科学教室助手、米国ハーバード大学留学、慶應義塾大学医学部放射線診断科助手を経て、2005より現職。医学部卒業後、一貫して乳がんなどの乳腺疾患の診断、治療に携わる。日本医学放射線学会専門医、日本乳癌学会乳腺専門医、日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影認定医師。
http://www.hiramatsu-clinic.jp/

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