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HEALTHCARE : 健康

DATE : 2019.04.25

ぴったりなウィッグで、変わらない日常を送ってほしい。 医療用ウィッグ「アンクス(ANCS)」を体験・後編

抗がん剤による脱毛に悩む患者さんのために開発された医療用ウィッグ「アンクス」。前編では、乳がんの経験があるファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんが、「アンクス」を体験しました。

後編では、「アンクス」開発に携わる、アートネイチャー執行役員の重松小百合さんと対談。女性用ウィッグの発展にこの人あり!といわれる重松さんに、医療用ウィッグ「アンクス」開発の裏話や思いをお伺いしました。

対談したのは……


アートネイチャー執行役員 重松小百合さん
美容師を経て、アートネイチャーに入社。新宿や銀座のレディースサロンの店長を経て、女性用ウィッグの開発担当に。自ら出演し、商品説明をするテレビ通販番組も大人気。


ファイナンシャルプランナー 黒田尚子さん
各種セミナーや講演、新聞・書籍・雑誌・Webサイト上での執筆、個人相談など、幅広く活動。がんをはじめ、病気に対する経済的備えの重要性を訴えている。2009年12月の乳がん告知を受け、2011年3月に乳がん体験者コーディネーター資格を取得。

病に向き合う方たちの、心の負担を軽くしたい。


黒田:実際に医療用ウィッグ「アンクス」を体験して、その自然な印象に驚きました。オールウィッグでも“かぶってます”って感じにはならず、まったく違和感がないですね。ほんとうにナチュラル。それに、すっごく軽くて、つけていることを忘れそう。こんなにつけ心地がいいことも予想外でした。

重松:ありがとうございます。見た目もつけ心地も自然なウィッグで、病に向き合う方たちの心の負担を少しでも軽くしたい、そんな思いから生まれたのが「アンクス」なんです。実は、私も今つけているんですよ。

黒田:ええっ! 全然わかりませんでした。ツヤのある、素敵な髪だなぁと思っていました。

重松:私も30代の頃に大きな病気をして、髪の毛が抜けてしまったことがあるんです。そのときは、ウィッグをつけていること、誰にも言えませんでした。だけど、いかにもウィッグですって感じのものしかなくて……。こうした経験があるから、脱毛に悩む患者さんの気持ちは、痛いほどわかります。

黒田:そうした重松さんのご経験が、ウィッグの開発に活かされているのですね。

重松:私は、アートネイチャーに入社する前、美容室で働いていたんです。入社後は、アートネイチャーレディース新宿サロンで、お客さまにウィッグをおすすめする接客や、カットやセット等の技術を担当していました。その後、レディース銀座サロンで初代店長を務めたのですが、ウィッグの仕様に納得できず、「もっとこうして」と本社に何度も掛け合いました。そしたら、「自分で女性商品の企画や開発をすればいいじゃないか」と、弊社代表の五十嵐から声がかかり、本社で女性用ウィッグの開発を担当することになったんです。

医療用だからこそ、細やかな工夫が必要。


黒田:アンクスは2009年にスタートしたそうですが、どういった経緯で生まれたのですか?

重松:その前から医療用ウィッグをつくってはいたのですが、オーダーメイドのみでした。オーダーメイドだと、注文を受けてから完成まで、1~1カ月半はかかります。もちろん、フィット感やつけ心地は申し分ないのですが、すぐに使いたいというお客さまのご希望にはお応えできません。そこで、すぐに使えて品質も満足いく医療用ウィッグをという思いから、アンクスが誕生しました。

黒田:アンクスの開発で、特に苦労したのはどんなところでしょうか? 既製のウィッグの場合、いろいろな方の頭にフィットさせないといけないし、医療用ならではの難しさもあるのでは?

重松:レディースアートネイチャーには30年以上の歴史があり、多くの女性の髪の悩みに応えてきました。日本人女性の髪と頭については、膨大なデータがあるので、そこからサイズ展開や形を決めました。治療によって、毛量が変化することも考え、サイズ調整できるようにすることも大切です。
また、何よりこだわったのがつけ心地。治療中は肌が敏感になり、ウィッグをつけると頭皮に刺激を感じることがあります。そこで、内側の素材は、柔らかくて素肌に優しく、通気性の良いものを使用しています。

黒田:アンクスを体験して、実感しました。医療用だからこその細やかな工夫が施されているのですね。

「わぁ、いつものお母さんになった」


黒田:アンクスにはたくさんの種類がありますが、お客さまのご希望は、どういったものが多いのですか?

重松:初めてのウィッグは、もともとの自分のヘアスタイルと同じものを希望される方がほとんどですね。見慣れている、普段のヘアスタイルを維持したい。できれば周囲の人には気づかれたくない。そう、おっしゃる方が多いです。

黒田:病気になる前の、あたり前の自分と日常を取り戻したいという気持ち、すごくよくわかります。私もそうでしたから。

重松:さらに、カットやアレンジで、少しでももとのヘアスタイルに近づけられるよう、スタッフも最善を尽くします。まず1個目は、もともとのヘアスタイルと同じもの。2個目、3個目でちょっと変身を、という方もいらっしゃいます。

黒田:価格帯も幅広いので、まずはいいウィッグを購入し、次は手頃なのを……なんて、使い方もいいですね。


重松:高価なものと手頃なものでは、材質や内側のネットだけでなく、つくり方も違います。高価なものは、熟練の職人がハンドメイドで毛髪1本1本を丁寧に結びつけているんです。でも、まずは手頃なウィッグを……というのもおすすめです。スタッフに、気軽にスタイルの希望と予算を伝えてほしいですね。気軽にふらっと来られて、「今日は下見だけ」というお客さまも、もちろん大歓迎です。

黒田:ウィッグ選び、迷うでしょうね。私なら、娘を連れていくかなぁ。「いいんじゃない」としか言わない夫は、連れていきません。娘は、似合うか似合わないか、辛口の意見を言ってくれるので、信頼できるんですよね。

重松:ご家族と一緒に来店されるお客さまは多いですね。6人家族総出で来店されたお客さまもいらっしゃいました。お客さまがウィッグをつけた姿に、みなさん涙してらして。「わぁっ、いつものお母さんになった」って。

アフターケアで、毛量の変化に対応。


黒田:乳がんに罹患した友人も、アンクスのウィッグを愛用しているそうです。いろいろなメーカーを検討した結果、「アフターケアがしっかりしているから選んだ」と話していました。購入から1年間は、毎月1回無料でメンテナンスを利用できるんですよね?

重松:ええ、そうなんです。シャンプー、トリートメント、スタイルセット、静電気(縮れ)直し、さらにはスタイル変更ができます。医療用の場合、脱毛・発毛の状態に合わせてサイズ調整が必要なので、アフターケアはとても大切なんです。

黒田:ほぼ毎日使うものとはいえ、高価なものだと、扱うとき緊張しちゃいますね。

重松:いえいえ、そんなことないですよ。ウィッグ用のシャンプーもあり、ご自宅で洗うこともできるんです。あんまり触っちゃいけないのではと、こわごわウィッグに触れる方もいますが、私はお客さまには、「どんどん触ってください」とお伝えしています。

黒田:ええっ、たくさん触ったほうがいいのですか?


重松ウィッグって、どれだけ自分のものにするかが肝心なんです。こうして持って、振って、空気を入れるといいんですよ(ウィッグを片手に持ち、バサバサと振る重松さん)。それから、つけたときも、手ぐしで空気を入れるようにしています。ほどよく乱れたほうが、より自然に見えるから。ブラシでとかすときも、上からだけでなく、下からもとかします。

黒田:なるほど。あんまり大事に扱いすぎると、かえって不自然に見えちゃうんですね。

重松:それに、少しくらいの運動なら大丈夫。アンクスのウィッグをつけて、ヨガをするお客さまもいらっしゃいますよ。日常、快適に過ごしてほしいという思いをこめて、お肌がデリケートになっている方でも安心して使えるオーガニックコットンキャップも開発しました。ご自宅ではこのキャップをかぶるというお客さまも多いですね。睡眠時のナイトキャップとしてもお使いいただけます。


黒田:近所に買い物に行くときも、これならいいですね。無地だけでなく、ボーダーもあるんだぁ。

ウィッグは、日常を取り戻すための必需品。


黒田:お客さまは、どのタイミングで、来店されるのですか?

重松:一番多いのは、治療が始まる前ですが、治療が始まってから来店されるお客さまもいらっしゃいます。アンクスを扱うショップには、必ず個室かカーテンで仕切られる部屋があるので、治療が始まっている方もご安心いただけると思います。それに、対応するスタッフの多くはピンクリボンアドバイザー(※)の認定資格を持ち、乳がんについての基礎知識を勉強しています。治療で毛量がどう変化していくかについてもアドバイスできるので、不安に思うことはどんどん聞いてほしいですね。

黒田:それは心強いですね。髪のことで悩んでいても、どこに相談したらいいかわからないという患者さんはたくさんいると思います。病院に医療用ウィッグのパンフレットが置いてはありますが、つなげてくれるところがもっとあれば、相談しやすくなりますよね。

重松:弊社が病院に伺うこともあるのですが、まだまだ少ないです。病院にもご自宅にも伺うので、気楽に問い合わせてほしいですね。

黒田医療用ウィッグの補助金・助成金制度を設けている自治体もありますが、まだまだ少ないです。東京都は港区だけです。また、医療用ウィッグは、確定申告の医療費控除の対象になっていないんですよね。


重松:補助金・助成金制度を実施している自治体に住んでいながら、ご存知ないお客さまもいらっしゃいます。ショップでは、必ずご案内しています。助成金制度にしても、医療費控除にしても、医療用ウィッグをつくっている企業が一丸となって、国や自治体に働きかけていかなければ、と思っています。

黒田:女性にとっては、日常を取り戻すための必需品ですものね。治療に前向きに取り組むには、アピアランス(外見)ケアは欠かせないものだと思います。

重松:確かに、そうした課題もありますね。アンクスは、まだまだ進化中です。常にお客さまの声を聞き、さらなるつけ心地、フィット感を追求していかなければと思います。

黒田:私も、今日の体験で、ウィッグに対する印象が大きく変わりました。抗がん剤治療を始める友人にも話してみます。本日は、どうもありがとうございました。

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