インタビュー
認知症専門医がすすめる認知症との向き合い方
「人生100年!頭も身体も元気で
いつまでもカッコよくいこう!」
平均寿命が延びるほどに、
健康に長生きする自分らしい生活
“クオリティ・オブ・ライフ”に注目は集まります。
一方で認知症の話題も気になるところです。
そこで認知症専門医である朝田隆先生に、
認知症の治療・研究に関する最新情報や
さらに人生100年時代の認知症との
よりよい付き合い方についてお話を伺いました。
発症する手前で防げないか?
認知症の“未病”状態の研究が
どんどん進んでいる
認知症といえば、アルツハイマー病と思い浮かべる方が多いと思います。
実際のところ認知症にはどのような種類があるのでしょうか。
認知症は大きくわけて4つのタイプがあります。アルツハイマー型認知症、脳卒中などが原因の血管性認知症、前頭側頭型認知症、そしてレビー小体型認知症です。
治療法としては、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症には進行を遅らせるための治療薬があります。血管性認知症については、血圧のコントロールにより脳卒中を予防することで再発予防ができます。いまのところ治療薬がまだ見つかっていないのは前頭側頭型認知症ですが、これは認知症全体の4~5%なので、まれな要因といえます。いずれにしても、認知症が治るとされている治療方法はいまだ見つかっていないのが現状です。
そこで、治療薬の開発と共に研究が進んでいるのが、認知症発症の前段階へのアプローチです。たとえば生活は自立できているけれど少し忘れっぽいという状態を、認知症予備軍として「軽度認知障害(MCI)」といいます。認知症は突然発症するのではなく時間をかけて進行するため、MCIと呼ばれる早い段階で治療をしようという考えです。最近ではMCIのさらに手前の状態を「プレクリニカル」と呼び、研究対象としています。認知症治療の研究は、対象がより手前の段階に移行してきていますね。
認知症の4つのタイプ
認知症
認知症の前段階
認知症の予備軍かどうかを
知るには?
専門医の問診やMRIなどで
認知症かどうかを診断するには、どのような検査があるのですか。
認知症は、症状のひとつに昔の記憶を呼び起こすことはできるけれど、新しいことを覚えることができないという特徴があります。これを調べるために、認知症専門医による問診や認知機能テストを行ったり、血液検査などで全身の状態を診たり、さらにMRIなど脳画像検査で実際に脳の形を調べることもあります。
ニューロトラック社が開発した「脳ケア」TMWEBサービスを、実際に先生に体験していただきましたが、
ぜひ、ご意見をお聞かせください。
そうですね。どのテストも集中して行うので後頭葉と前頭葉をよく使いますね。記憶を扱うものは海馬が、図形の問題などは右の側頭葉機能が活発に働きます。AIやビッグデータを複数活用したりして解析されているのは非常に「いま風」で新しいですね。
インターネット上には、正しい情報だけでなく裏付けのない情報も混在しています。一般の方にはその判別は難しいでしょう。でも、この「脳ケア」テストは、脳ケアに特化した専門家が科学的根拠を基に研究開発を行っているので、信頼性があると考えます。その点は外出しなくても家で気軽にできるWEBサービスなので気になった時に気軽にテストできますね。というのも、いまは認知症の検査を受けたいと思っても、専門医のいる病院へ行くこと自体に抵抗を感じる方も多いと思うからです。ITリテラシーの高い50代~60代前半などの世代には、自宅にいながら検査できていいですね。ただし「試されている感」というのは、こういったテストにはつきものなので、遊び感覚で取り組むのがよいと思いますよ。
長生きすれば誰にでも起こること。
怖がらずに、プチ物忘れを
目指してみよう
認知症を発症したらどうしようと恐怖心を感じる方もいると思います。
人生100年時代とよくいわれる現代、認知症とどのように向き合っていくとよいでしょうか。
「絶対ならないぞ」と思うと、認知症は恐しく感じるでしょう。長寿に認知症はつきものですから。大なり小なり誰にでも起こりえます。だから「ならない!」ではなく、天寿をまっとうしたときに「そういえば、おじいちゃん、少し忘れっぽいところあったね」と家族が懐かしく思い出すような「プチ物忘れ」を目指してみてはいかがでしょうか。より達成しやすい目標だし、そのような捉え方をおすすめします。
または「人生100年時代」ですから、「かっこよく生きていこう!」と目標をたてるのもいいですね。かっこよく生きるためには、生きがいをもっていた方がいいし、頭も身体も元気でいたほうがいい。認知機能低下を防ぐセルフケアはいろいろありますが、「認知症になりたくないから」ではなく「かっこよく生きたいから」と思う方がやる気も出て、結果オーライになりやすいと思います。
知人の社会心理学者が話してくれたのですが、人は「かっこいいね」「すごいね」と褒められると、嬉しくて「もっともっとがんばろう」とやる気が出るそうです。そういう意味では、認知症の方がおられるご家族は、お互いに褒めあう“互恵”も大切にしてほしいですね。「かっこよく生きよう!」と本人も切り替えて、周りも「かっこいいね」と褒めてあげる。怖がるのではなく、そんなふうに切り替えることが、人生100年時代を乗り越えていくコツではないでしょうか。
お話を伺ったのは・・・
朝田 隆 先生
- メモリークリニックお茶の水・取手 理事長・院長
- 東京医科歯科大学 客員教授
- 筑波大学 名誉教授
1955年生まれ。
40年近くにわたり、1万人を超える認知症および
その予備群であるMCIの治療に従事。
おもな著書に『まだ間に合う!今すぐ始める認知症予防』
(講談社)ほか、著書多数。