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DATE : 2018.08.06

乳がんについての最新情報

誰にとっても他人事ではない乳がん。では、実際にどれくらいの人が乳がんにかかり、
どんな治療を受けているのでしょうか。乳がんを防ぐためにできることも、あわせてご紹介します。

監修:ピンクリボン ブレストケアクリニック表参道 院長 島田菜穂子先生 

1.日本人女性の11人に1人が乳がんになる時代です

一生のうちで乳がんになる日本女性は、約11人に1人といわれています。
国立がん研究センターの統計によると、乳がんは女性がかかる最も多いがん(2013年の推計による)で、年代別では、30代半ばから乳がんになる人が増え、40代後半にピークを迎えます。 

2.年間1万人以上が、乳がんによって命を落としています

近年、日本女性が乳がんで死亡する数は増え続けています。厚生労働省の調査によると、2016年には1万4013人が乳がんで命を落としていて、その数は1980年の死亡者数と比べると3倍以上。乳がんにかかる人の数が増えることで、死亡する人の数も増えているのです。
※厚生労働省人口動態統計[確定数]より(2017年9月15日発表) 

3.「個別化医療(Precision Medicine)」という考え方が広がっています

最近、広がっている考え方に「ひとりひとりの乳房の状態や、ライフスタイル・リスク・遺伝子情報や価値観に応じた予防や治療を行う」というものがあります。これを「個別化医療(Precision Medicine)」といい、2015年当時、アメリカ大統領を務めていたオバマ氏が発表した政策によってスタートしました。ひとりひとりに最適な予防や医療がプランできるような未来を目指して、現在も研究が進められています。

残念ながら乳がんを確実に予防する方法はまだありませんが、将来はひとりひとりが個々の特性に合わせた工夫をすることで予防可能になるかもしれません。 

4.乳がんを防ぐために気をつけたいこと

100%予防する方法はまだありませんが、食事や運動、生活習慣の見直しなど、乳がんになるリスクを下げるために、できることがあります。

①食事を見直す

乳がんを防ぐための食生活の基本は、カロリーや脂肪のとりすぎを控え、栄養バランスのとれた食事をとること。タンパク質が豊富な主菜に、食物繊維たっぷりの副菜、そして主食と汁物を合わせると、栄養バランスが整いやすくなります。
1日3食を規則正しくとり、一口ずつよく噛んで、食べすぎによる肥満を防ぎましょう。ちなみに、乳がんの女性が増えている要因の一つに、閉経後の肥満があります。

②運動習慣をつける

運動をすることは、あらゆる病気のリスクを下げることに加え、女性ホルモンをはじめとしたホルモンのバランスにもプラスの働きがあります。長く続けることが大切なので、無理をせず、ひと駅分歩いてみたり、エレベーターやエスカレータではなくときには階段を使ってみたりすることから始めましょう。運動が得意な人へのおすすめは、ウォーキングや水泳などの有酸素運動。週3回、1回あたり30分くらいが目安です。

そして、筋肉量を保つことも大切。基礎代謝量を上げることで肥満防止につながるのはもちろん、正しい姿勢の維持や転倒予防にも役に立つので、乳がん予防だけでなく年齢を重ねても美しく元気でいるための大きなカギとなります。

③生活習慣を見直す

タバコは乳がんだけでなく、あらゆるがんのリスクを高めます。
他人のタバコから出る副流煙も悪影響を及ぼすため、自分が吸わないだけでなく、タバコの煙が充満する場所に近づかないことも大切です。
また、お酒は少量たしなむ程度なら問題ありませんが、飲みすぎるのはよくありません。1日につき、ビールなら中ジョッキ1杯、焼酎なら2/3合、ワインならグラス2杯を目安にしましょう。このほか、ストレスや睡眠不足もがんの発症に関係すると考えられています。

5.乳がんの治療法は進化を続けています

患者数が増え続けている乳がんですが、予防・発見(画像診断)、治療の方法や研究はめざましく進歩しています。
また、乳がんとひとくちにいっても、性質(サブタイプや増殖能、遺伝子情報など)によっていくつもの種類があり、それぞれのタイプに対しどんな薬が効果的なのか明らかになってきました。
特に早期の乳がんであれば、乳がんの種類に加え、ひとりひとりのライフスタイルや価値観にあわせて手術方法も選べるようになり、乳がんを取り巻く環境は、この数年で大きく変わってきています。

現在行われている基本的な治療法

乳房への局所治療と、全身治療を組み合わせて行うのが基本。
局所療法では「手術」、あるいは「手術」と「放射線療法」を組み合わせて行います。全身治療では、主に薬物療法、抗がん剤や女性ホルモンを抑えるホルモン療法、分子標的療法が行われます。

手術は、がんの進み具合やしこりの位置などによって、乳房の一部だけを切除するか、乳房をすべて切除するかが選択されます。手術で切り取る範囲を少なくするために、手術前に薬物療法を行い薬で腫瘍を小さくしてから手術を行うこともあります。また、腫瘍のみを切除し正常部分の乳房を残す手術(温存手術)の場合は、腫瘍があった側の残りの正常乳房からがんが再発することを防ぐために温存した側の乳房に術後に放射線療法を行うのが一般的です。 

6.これからの新しい治療方法

日々研究が進められ、乳がんの新たな治療法が開発されています。なかでも、代表的なものをご紹介しましょう。

    1:乳房の再建
乳がんの手術では、可能であれば正常部分の乳房を残すのが一般的でした。しかし最近は、局所再発リスクや形のよくない乳房が残るという問題をふまえ、乳房全体を切除して乳房を再建するケースが増えてきています。 シリコンバックなどの人工物を用いたり、自分のお腹や太ももの脂肪や筋肉を用いて乳房を作ったり、美しい乳房を取り戻すための形成手術の実施が進められ、現在はこれらの多くが保険診療の適応となっています。
    2:放射線治療
放射線療法でも新たな治療法に期待が寄せられています。たとえば、1回あたりの照射線量を増やして短期で治療を終える「短期全乳房照射法」はそのひとつです。 まだ研究段階で治療としての安全性は確認されていませんが、がんがあった付近だけに照射する「加速乳房部分照射」をおこなう病院も見られます。
    3:低侵襲治療
できるだけ手術を行わないで腫瘍を無くすことを目的に現在研究が進められている治療法(低侵襲治療)もあります。たとえば、ラジオ波でがん細胞を焼き切る「ラジオ波熱凝固療法(RFA)」なども注目されている治療法です。そのほか「非切除凍結療法」では、がん細胞に針を刺してガスで凍らせることで、がん細胞の死滅をねらいます。 粒子線・重粒子線を照射する「粒子線・重粒子線療法」なども低侵襲治療の試みですが、それぞれ研究段階でまだ確実な安全性は確立していません。普及に向けてさらなる開発・検討が進められています。

PROFILE

【監修】島田菜穂子先生NAOKO SHIMADA

認定NPO法人 乳房健康研究会 副理事長。
ピンクリボン ブレストケアクリニック表参道 院長。
1986年筑波大学卒業後、筑波大学附属病院、東京逓信病院勤務、同院で1992年乳腺外来を開設、1999年米国ワシントン大学ブレストヘルスセンター留学を経て2008年ピンクリボン ブレストケアクリニック表参道を開院。2000年乳房健康研究会を発足し、乳がん啓発団体として日本初のNPO認証を受けピンクリボン運動を推進。日本医学放射線学会放射線科専門医、日本乳癌学会乳腺専門医、日本がん検診診断学会認定医、日本スポーツ協会認定スポーツドクターなどの資格を持つ。

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