HEALTHCARE健康

HEALTHCARE : 健康

DATE : 2018.11.15

胸にも妊娠線はできる?どうすれば妊娠線を防げる?

おなかにできるイメージがある妊娠線ですが、胸に現れることもあります。洋服で隠せても、自分の胸を見るたび気になってしまう……という人も少なくないことでしょう。そもそも、なぜ胸にも妊娠線ができてしまうのでしょうか。そして、妊娠線を消すことは可能なのでしょうか。医師監修のもと、妊娠線の予防法とあわせて詳しくお伝えします。

監修:医療法人優美会理事長、吉井クリニック院長 吉井友季子先生 

妊娠線が胸にできる理由は?

まずは、胸に妊娠線ができる仕組みについて、妊娠線の基礎知識をふまえながらお伝えしましょう。


妊娠線とは?

妊娠線は、医学的には「線状皮膚萎縮症(皮膚伸展線条)」と呼ばれます。下腹部や太ももを中心に、幅が数ミリ、長さが十数センチくらいで、少しへこんでいてヒビ割れたような線がいくつもみられるのが特徴です。ほぼ平行して線が現れるという特徴もあります。

できはじめの頃の妊娠線は薄い赤色や赤紫色をしていますが、だんだん白っぽくなってきて、表面に細かいシワが現れます。妊娠線は妊婦の90%以上にできるといわれていて、下腹部や太もものほか、胸やお尻にできることもあります。

では、なぜ妊娠線ができてしまうのでしょうか。まず考えられるのが、妊娠でおなかや胸が大きくなり、皮膚が伸び広がってしまうことによる影響です。伸びきれなくなった皮膚の内側が裂けることで、妊娠線が現れます。

ただし、それだけが原因となるわけではありません。妊娠中は、ステロイドホルモンのひとつであるグルココルチコイドの分泌が増えるのですが、このホルモンは肌のターンオーバーを抑制する作用をもっています。グルココルチコイドが増えることで、肌の新陳代謝が低下して弾力が失われ、妊娠線ができやすくなってしまうと考えられています。


胸にも妊娠線ができてしまうのはなぜ?

妊娠すると、出産後の授乳に備えて、乳腺と呼ばれる母乳をつくったり運んだりする組織が発達します。さらに、体の脂肪が増えるにつれて胸もだんだん大きくなるため、下腹部などと同じように胸にも妊娠線ができることがあります。


授乳中にも妊娠線はできる可能性がある

胸以外の部位については、出産後に妊娠だけが影響して妊娠線ができることはありません。ただし、胸に関しては別の話。授乳中は胸が張った状態が続くため、妊娠中にできなかった人でも、授乳中に妊娠線ができる可能性は十分に考えられます。 

胸にできる妊娠線の予防方法

妊娠線の対策は、いかに予防していくかがカギになります。とくに注意したいのが、体重管理とスキンケアの2つです。

体重を管理する

皮膚が伸びきってしまうことで妊娠線ができやすくなるため、妊娠線を予防するうえでは、必要以上に体重が増えないよう上手に管理することが大切です。

とはいえ、妊娠中は体重が減りすぎるのもよくありません。厚生労働省が母子の健康水準を向上させるために取り組んでいる「健やか親子21」では、望ましい体重増加の目安を次のように定めています。



やせ~ふつうの体格の人においては、1週間あたりの体重増加は300~500gを目安にするといいでしょう。


-摂取カロリーの目安と、積極的にとりたい栄養素

では、妊娠中の体重を管理するために、具体的にどのようなことに気をつければよいのでしょうか。まずは、1日あたりの摂取カロリーを意識することが重要。同じく「健やか親子21」では、妊娠中の推定エネルギー必要量を次のように設定しています。



妊娠中は、赤ちゃんとお母さんの健康を保つことが第一です。体重を増やしたくないからと、極端に食事を制限するのはよくありません。上の表を参考にしつつ、1日3食バランスのよい食事を規則正しくとることが基本となります。

とくに不足しやすい鉄分やカルシウム、ビタミンB群の摂取を意識して、脂肪分は控えめに、良質なタンパク質を含んだメニューを選びましょう。

また、妊娠中は女性ホルモンの影響に加え、子宮が大きくなって腸が圧迫されることで便秘になりやすいのも気になるところ。適度な水分摂取を心がけながら、スムーズな便通をサポートする食物繊維の摂取を意識することも大切です。

調理する際は、具材を大きめにカットすると、噛む回数が自然に増えて食べすぎの防止につながります。間食では、ジュースや甘いお菓子をとりすぎると体重の増加を招くため、ハーブティーや無糖ヨーグルトなど糖分が少ないものを選ぶといいですね。


-運動をするときに注意したいこと

安定期に入ったら、適度な運動を取り入れるのもおすすめです。ただし、体に負担がかかるような激しい運動や、おなかが張っているのに無理して運動するのはよくありません。

ウォーキングやマタニティヨガ、マタニティスイミングなど、楽しみながら体を動かせる運動メニューがいいでしょう。出産に備えて体力がつきますし、よい気分転換にもなりますよ。


胸の保湿や肌ケア


先にお伝えしたように、ステロイドホルモンの影響で肌の弾力が失われると、妊娠線ができやすくなります。専用のクリームなどを使った保湿ケアで肌の弾力をキープすることも、妊娠線の予防に役立ちます。

目ですぐに見える部位はケアしやすいのですが、胸の裏側など視界に入らない場所は見落としやすいため、胸全体にまんべんなく塗ってしっかり保湿しましょう。

また、妊娠中は女性ホルモンのバランスが変化して、肌が敏感になることもあります。肌あれやピリピリした刺激など、保湿ケアによる異変を感じた場合は、すぐに使用を中止して医師に相談してください。 

できてしまった妊娠線は消せる?

気をつけていたつもりなのに、いつのまにか妊娠線ができていた……そんなこともあるかもしれません。はたして、一度できてしまった妊娠線を完全に消すことは可能なのでしょうか。

残念ながら、妊娠線は時間が経つにつれて少しずつ目立たなくなっていきますが、完全になくなることはほとんどありません。現時点では、有効な治療法はないとされています。ただし、最近ではレーザーやレチノイドを使った治療例も報告されているので、これからの治療法の確立に注目したいところです。

妊娠線の対策においては、早めの予防がカギを握ります。また、胸の場合は、出産後の授乳中にできてしまう可能性も考えられます。ていねいな保湿ケアを心がけながら、栄養バランスのよい食事や十分な睡眠をとって、妊娠線ができにくい肌コンディションをキープしましょう。

PROFILE

【監修】吉井 友季子先生YUKIKO YOSHII

医療法人優美会理事長、吉井クリニック院長
大阪市立大学医学部卒業。H11年大阪府吹田市江坂で吉井クリニックを開院。内科、外科、婦人科疾患、健診や予防医療、美容医学に力を入れ成果をあげている。著書多数。健康・美容に関して雑誌、新聞でコメントを求められることも多い。
https://www.yoshiiclinic.jp/

つづきを読む

SOMPOひまわり生命の
資料請求はこちら

詳しくはこちら