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DATE : 2018.11.08

おっぱいの素朴な疑問を専門家が解決!生理前になるとおっぱいが痛くなるけれど、これは病気?

おっぱいに張りや痛みを感じたときに心配になる、検診を受けていたにもかかわらず乳がんになったというニュースを見て怖くなる…女性なら、このような“おっぱいにまつわる不安”を感じたことがあるのではないでしょうか?
そんな不安は、乳腺の専門医に聞いて解消するのが一番です!

回答者:ブレストケアクリニック表参道 院長 島田菜穂子先生

【疑問1】生理前になるとおっぱいが痛くなるけれど、これは病気?

これは、女性ホルモンの影響による乳腺(母乳をつくる組織)のむくみや腫れが原因になっていることが多いですね。生理前と排卵のタイミングで女性ホルモンが増えるのですが、そうすると、乳腺に水が溜まりやすくなるんです。

少しのむくみであれば「ちょっとおっぱいが張っているな」という程度で済みますが、さらに水が溜まってくると、乳腺のすき間を水がこじ開けるようにスペースを作り水たまりの袋(乳腺のう胞)ができます。このときに、チクチクと差し込むような痛みを感じることがあるんです。なかには、寝ていても目が覚めてしまうくらい痛いという方もいますよ。

ただ、生理が始まる直前に女性ホルモンは少なくなりますので、その後は乳腺に溜まった水分は減少し、消えることもあります。そうすると痛みも自然と治まってくるのです。痛みが生理のサイクルとリンクしていて、かつ2週間程度で治まるようであれば、病的な痛みではなく女性ホルモンの働きで起きている症状の可能性が高いでしょう。

いつまでも痛みが治まらず、それどころかどんどん増してくる。痛みだけでなく、熱や腫れを伴うようになる。そういう場合は、腫瘍や炎症などの原因がある可能性が高いので、一度病院で診てもらうと安心です。一昔前までは、乳がんは痛みがないといわれていました。しかし、閉経前の女性ホルモンの働きで乳腺が張りやすい方は、しこりが良性でも悪性でも痛みを感じることがあります。

おっぱいに痛みを感じたら、それがどんなタイミングで起きて、どれくらい続くかをしっかりチェックしてくださいね。

【疑問2】乳首にかゆみや違和感が……病院に行った方がいいの?

乳首にかゆみや違和感がある場合、よく見られる原因としては、女性ホルモンの影響があげられます。生理前や排卵期など女性ホルモンが活発に働く時期は、乳首に痛がゆいような症状が出ることがあります。生理のサイクルと連動して胸の張りと同時に起こるようなら、この可能性が高いといえますね。

それから、乾燥が原因で乳首や乳輪がかゆくなることもよくあります。乳首や乳輪の皮膚はとても薄く、乾燥の影響を受けやすい部位。特に秋冬の空気が乾く時期は、ボディクリームなどで保湿しましょう。

また、乳頭や乳輪はアトピー性湿疹やアレルギー性湿疹なども起こりやすい場所です。特にアレルギーが原因の場合は花粉症のシーズンになると乳頭や乳輪が無性にかゆくなり、寝ている間などに無意識に掻いてしまうと湿疹やただれを引き起こすこともあります。直接花粉が乳頭に付着しなくても、鼻やのどからの花粉の吸引でアレルギー反応が起きると、乳首や首、腕の内側など、皮膚が薄く柔らかい部分に湿疹やかゆみが出やすいのです。「春になると決まって乳首がかゆくなる」という方は、花粉の影響を疑ってみましょう。この場合は花粉症の治療として薬を飲んだり、湿疹の症状を抑える軟膏を使用したりすることで改善します。

このように、乳首のかゆみはさまざまな要因で起こります。実際に当院にも、乳首がかゆいといってたくさんの患者さんが来院しますよ。「インターネットで検索したら、乳がんの症状で乳首に異常が起こるとあって……」と顔を真っ青にして来院される方もいますが、乳首のかゆみ=乳がんというわけではないので、焦らなくて大丈夫です。

しかし、もちろん病気によって引き起こされることもあります。かゆみはないけれど湿疹がいつまでも治らない場合などは、パジェット病という比較的稀な乳がんの可能性も。しばらく様子を見てもよくならない、保湿をしてもかゆみがおさまらない場合は、一度皮膚科または乳腺科の医師に診てもらってください。

【疑問3】エコーやマンモグラフィを2年ごとに受けていれば、乳がんは必ず発見できるの?

結論からいうと、必ず発見できるわけではありません。
乳がん検診は自覚症状のない方が、乳がんを早期に発見をするために行う検診です。検診は、国が政策として乳がんで国民の利益が損なわれないために行う“対策型検診”と、個々が自分の乳がんを早く見つけるために行う“任意型検診”に分けられます。

いわゆる市区町村の検診は、国が行っている “対策型検診”です。
日本全体で、乳がんで亡くなる人の数を減らすための予防策で、税金を使って検診の費用の全部または一部を負担しています。どの年代からどのくらいの頻度でなんの検査を受ければ、乳がんによる死亡者数を減らせるか科学的な統計データも参考にしながらを、費用対効果も考慮しながら決めた方法です。
したがって、最も乳がんになる頻度多くなる40代からのスタートで、すでに欧米で乳がん死亡率低下のデータが得られているマンモグラフィ検査を用いる検診となっており、検査の間隔は2年に1回です。

検証では、1年に1回の検診と比較して、2年に1回の方が早期発見される方はわずかに少なくなります。しかし、当たり前のことですが検診や精密検査にかかる費用は2年に1回の方が安くできます。税金を用いる国の政策としては、費用対効果も考慮されなければいけませんので、検診のガイドラインは2年に1回と定められているのです。

対策型検診が、日本国民の全体に対して乳がん死亡率低下という平均的な利益を求めるのが目的なのに対して、任意型検診は、個々一人一人が自分の乳がんを早く見つけて治療するために必要な検診を自身のリスクや希望に合わせて、自分で行う検診のことです。
対策型検診で必要十分な検診となる方もいれば、例えば、身内に乳がんを若くして発症した方がいたり、何らかの治療で女性ホルモン剤を使っていたりする方は乳がんリスクが高いため、2年に1回の検診では不十分なこともあります。
また対策型検診ではマンモグラフィを用いていますが、乳腺が発達している高濃度乳房というタイプの乳腺の方はマンモグラフィのみでは早期乳がんの発見は限界があることも知られています。このような方々は、対策型検診では乳がんの早期発見のための十分な検査にはならない可能性もあります。


家族歴や女性ホルモンの服薬歴、ライフスタイルなどによって、検診の開始年齢や必要な検査、頻度は個々で異なってきます。まずは、自分が生涯どんな検診を組み立てていくのが安心かを知ることから始めましょう。
初めて検診を受けるときは、できれば乳腺の検診を専門的にできるような医療機関を受診し、今後どのようなプランで乳房を守っていくか相談してみるのがおすすめです。
そのうえで自治体の検診、会社の検診なのか、あるいは自分でオーダーメイドする任意型検診が自分に向いているのかを見極めて、無駄なく快適に続けられる検診を計画することが乳がんに負けない大きなカギとなります。

PROFILE

【回答者】島田菜穂子先生NAOKO SHIMADA

認定NPO法人 乳房健康研究会 副理事長。
ピンクリボン ブレストケアクリニック表参道 院長。
1986年筑波大学卒業後、筑波大学附属病院、東京逓信病院勤務、同院で1992年乳腺外来を開設、1999年米国ワシントン大学ブレストヘルスセンター留学を経て2008年ピンクリボン ブレストケアクリニック表参道を開院。2000年乳房健康研究会を発足し、乳がん啓発団体として日本初のNPO認証を受けピンクリボン運動を推進。日本医学放射線学会放射線科専門医、日本乳癌学会乳腺専門医、日本がん検診診断学会認定医、日本スポーツ協会認定スポーツドクターなどの資格を持つ。

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