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DATE : 2018.08.06

胸が痛い時に考えられる原因と、症状ごとに受診すべき病院の選び方

「胸が痛い」といっても、その原因はさまざまです。原因を大きく3つに分けると、「臓器に原因がある場合」「心因性の場合」「成長にともなう正常な痛み」となります。順に見ていきましょう。

監修:医療法人ビバリータ ポートサイド女性総合クリニック院長 清水なほみ先生

胸の痛みの原因は「臓器の病気」「心因性」「正常な痛み」

①胸部にある臓器に炎症などが起こっている場合

胸部には肺、胸膜、心臓、血管、骨、神経、筋肉、乳房、一部の消化器があります。これらの臓器が傷ついたり、細菌やウイルスに感染したりすると、炎症が起こって痛みを生じることがあります。炎症が起きている臓器によって痛みを感じる部位や痛みの種類、痛みの起きる頻度は多種多様です。

たとえば心臓の血管が狭くなる「狭心症」では、運動などをしたときにギューッと締めつけられるように胸が痛み、数分で消えることが多いです。肋骨に沿って走る神経が傷ついて起こる「肋間神経痛」は突然起こることが多く、しかも片側だけに起こります。

女性特有といえば乳房の痛みです。原因としては「乳腺炎」や「生理前の乳房の張り」、「乳腺症」などがあります。これらについては、後ほど症状の特徴を詳しく説明することにしましょう。


②心因性の場合

心因性とは「精神的・心理的な原因で起こる」という意味です。病院で詳しい検査をしても特に異常は見つからないのに本人は症状を訴えている場合、心因性が疑われます。痛みの種類は人によってさまざまで、ギューッと心臓のあたりが苦しくなる場合や、胸を押しつぶされるような圧迫感がある場合、チクチクと針で胸を刺されているような痛みを感じる場合などがあります。

心因性が疑われるケースでは本人の話をよく聞き取っていくと、しばしば不安や恐怖、怒り、悲しみなどのストレスが背景にあったりします。


③成長や発育の過程で起こってくる正常な痛み

思春期にあたる年頃、ちょうど中高生あたりの女子は心も体もより女性らしく変わっていきます。女性ホルモンが分泌されると、その影響で生理が始まり乳房が大きくなりますが、だいたい初経の1年以上前から乳房は膨らみ始め、約4年で大人の乳房へと変化するといわれています。

この乳房の成長過程で乳頭や乳房が痛むことがあります。痛みの強さは個人差がありますが、一般的には下着と擦れて痛んだり、乳房全体が張って痛んだり、しこりを感じたりします。成長にともなう痛みは正常な痛みで、成長が緩やかになり体が成熟すると次第に治まっていきますので、通常は心配ありません。

その胸の痛み、病気のサインかも?疾患別の気になる症状

さらに詳しく「胸が痛い」とき、
どんな病気が考えられるかを見ていきましょう。

乳房の病気

月経前症候群(PMS)

生理前に心身に不快な症状が現れ、日常生活に支障をきたす病気。下腹部の痛み、重苦しさとともに、胸の張りや痛みが生じることが多いです。むくみや肩こり、イライラ、気分の落ち込み、疲れやだるさなどの症状もあります。毎月不調を抱えながらも病気と思わずに我慢しているケースが多くあります。

乳腺炎

母乳が詰まったり、乳腺に細菌感染したりすることで起こる病気です。乳房が腫れて熱をおび、焼けるような痛みやチクチク感を感じます。発熱や悪寒が現れることもあります。主に授乳期の女性がなりやすい病気です。

乳腺症

乳腺に良性のしこりや、のう胞ができる病気。乳房に張りや痛みを感じることがあります。しこりの特徴は「境目がはっきりしない」「弾力性がある」「大小さまざまなしこりが複数できる」「生理前になると大きくなり、生理が始まると小さくなる」など多彩な症状を呈します。乳腺の病気の中で最も多く、30代~40代によくみられます。

乳がん

乳腺にできる悪性腫瘍。乳房に痛みのない硬いしこりができます。指で押しても動かないのが特徴。進行すると皮膚がへこんだり、乳首から血の混じった分泌物が出たりする場合があります。乳がんは40代以上の女性で増えてきますが、10代20代など若い年代でも起こります。また、高齢出産をした人や授乳の経験が少ない人、肥満の人、親族にがん経験者がいる人などがかかりやすい傾向にあります。まれに男性の乳がんもあります。


肺や胸膜の病気(※胸膜は肺を包んでいる膜)

気胸

肺に穴が開いてパンクしてしまう病気。一般的に、突然の胸痛と息苦しさが同時に起こります。痛みは深呼吸すると強くなり、継続するのが特徴です。若い痩せ型の男性に多い病気です。

胸膜炎・膿胸

胸膜に炎症が起こり、胸の中に膿がたまる病気。細菌などの感染が原因で起こり、発熱や悪寒をともないます。風邪と似た症状ですが、胸部に鈍い痛みが現れます。呼吸で肺が膨らむと痛みが強くなることが多いです。


心臓や血管の病気

狭心症

心臓の血管が狭くなる病気。労作時にみぞおち~左胸あたりに、締めつけられるような痛みや圧迫感を感じますが、多くは数分で消えます。放散痛といって、首や肩、歯などの痛みとして感じられることもあります。

心筋梗塞

心臓の血管が詰まってしまう病気。胸の痛みが強く、持続時間も長く、冷や汗や呼吸困難、意識が薄れるなどの症状がある場合は、心筋梗塞が疑われます。命に関わることも多い病気なので、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。

大動脈解離

大動脈が裂ける病気。大動脈は、心臓から出て全身に血液を送る体の中で一番太い血管です。胸痛は突然起こり、これまで経験したことのない激しい痛みが起こります。痛みの特徴は、引き裂かれるような痛みで時間とともに広がっていきます。すぐに処置しないと命に関わることが多い病気です。


神経・筋肉・骨の病気

肋間神経痛

肋間神経が何らかの原因で障害される病気。突発的な痛みが片側だけに起こるのが特徴です。深呼吸や咳をしたり、寝がえりを打ったりしたときに強く痛みます。

帯状疱疹

体の中に潜んでいた水疱瘡のウイルスが活発化して起こる病気。体の左右どちらか一方に、ピリピリと刺すような痛みが局所的に現れ、続いて発疹と小さな水ぶくれが帯状に現れます。胸部だけでなく全身で起こる可能性があります。

胸の痛みを予防するには?どんな病院にかかるべき?

それぞれの痛みに対して、どのような対策や予防をすればよいでしょうか。

心臓や血管の病気を予防する方法として、日常生活でできることは、正しい生活習慣づくりです。まず食事は1日3食をバランスよく取りましょう。極端な偏食や厳しい食事制限によるダイエット、逆に肥満は体調を崩すことに繋がります。

次に適度な運動を習慣にしましょう。
適度な運動の目安は、軽く息が上がり、少し汗をかくくらい。運動が苦手な人にはストイックな運動より、ゆっくりペースでできるジョギングやウォーキング、ヨガ、水泳などがおすすめです。

またストレスをためないことも大事です。お風呂にゆっくり浸かったり、アロマを焚いたり、気分転換に旅行に出かけてみたり、運動で汗を流すのもスッキリします。ストレスはどうしても日々受けてしまうものなので、こまめに解消することがポイントになります。自分なりのリフレッシュ法をもっておくとよいでしょう。

喫煙の習慣のある人は、ぜひ禁煙を!タバコの煙にも多くの有毒物質が含まれています。外食のとき分煙のお店を選ぶなど、受動喫煙にも気をつけて。

胸の痛みが続く、悪化する、原因が分からず不安というときは、ためらわずに病院へ。胸の痛みとともに息苦しさや動悸などがある場合は、肺や心臓などの病気の可能性が高いので内科や心臓血管外科を受診します。
体をひねったり、伸びをしたりなど動いたときに痛みが出る場合は、神経や筋肉に原因があると考えられるので整形外科を受診します。

乳房の痛みは、女性特有の病気を診てくれる乳腺外科や女性外来がベストです。授乳中の症状はお産をした病院や助産院で診てもらいましょう。病院で診てもらっても診断がつかない、薬を飲んでも効いている気がしないなどの場合は、心因性の可能性もあります。
一度、心療内科や精神科を訪ねてみるとよいでしょう。

PROFILE

【監修】清水なほみ先生NAHOMI SHIMIZU

医療法人ビバリータ ポートサイド女性総合クリニック院長 
日本産科婦人科学会専門医
日本不妊カウンセリング学会認定カウンセラー
全ての女性が「自分らしい輝きを取り戻す」場として、横浜に婦人科クリニックを開業。婦人科医としての診療のみにとどまらず、漢方やキネシオロジーなどの代替医療も総合的に活用しながら診療にあたる。また、トランスフォーメーショナルコーチ®のテクニックをフルに活用し、ブログでの情報発信やワークショップ、診療内のカウンセリング等で「本来の自分の姿に戻ることで健康を取り戻す」医療を展開している。
https://www.vivalita.com/

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