HEALTHCARE : 健康
DATE : 2022.09.26
「プレコンセプションケア」って? 将来、少しでも妊娠・出産を希望するすべての人に。
最近少しずつ認知度が高まってきている「プレコンセプションケア」、みなさんはご存知でしょうか? 今回は日本産科婦人科学会 専門医の窪田真知先生がその必要性やポイントを解説。妊娠・出産を希望する方もそうでない方も、健やかに暮らしていきたいすべての方に知ってほしいエッセンスをご紹介します。
今回教えてくれるのは……
「プレコンセプションケア」とは
WHOは、プレコンセプションケアを「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」と定義しています。
もう少しわかりやすく説明すると「妊娠を意識していない段階から健康に関する正しい知識を身につけ、実践し、妊娠の希望の有無にかかわらず生涯を元気に過ごそう」という考え方です。つまり、性別も生き方も関係なく、“すべての若い方にとって関係がある考え方”ということになります。
そんなプレコンセプションケアの大きな目的は、本人の健康維持、そして健全な妊娠・出産と、次世代の子どもたちの健康増進です。
そのためには、体をつくる食事や運動といった生活習慣の見直しと改善、適正体重など健康に関する知識の習得、健康診断をはじめとした定期的な体のチェックといったアクションが必要になります。
健康診断の結果が問題ない=大丈夫、とは限らない
“健康管理”と聞いて、「私は健康診断(もしくは人間ドック)で“異常なし”という結果が出ているから大丈夫」と考える方は少なくないでしょう。しかし、健康診断に引っかかっていないことは、プレコンセプションケアができていることとイコールではありません。
健康診断の結果は、あくまで現在の体の状態を示します。今この時点において各種数値が正常値から逸脱しておらず、問題なく働けるかを確認するためのものです。
また、健康診断の結果が良好であれば健全な妊娠・出産ができるかというと、必ずしもそうではないでしょう。“ひとりの体”であれば問題ないけれど、お腹で赤ちゃんを育んでも健康に支障が出ないかどうかまではわからないのです。
つまり、健康診断の結果に問題がなく、適正体重を維持している方でも、プレコンセプションケアの観点から意識したいことがあります。将来的に子どもを持つことを希望している方であれば、「もしも今、自分の体に命が宿ったとしたら、どういう環境を提供するだろう?」と考えてみると、気づきがあるのではないでしょうか?
今日から始めたい「プレコンセプションケア」3ステップ
ここからは、プレコンセプションケアを行うための10の具体的なポイントをご紹介します。将来の計画を立て、未来のために生活習慣をチェックする、もしもの病気のリスクに備えるという3ステップ。できることから始めてみましょう。
ステップ1:将来の計画を立てる
・将来の妊娠・出産をライフプランとして考えてみようこれからどんなふうに生きていきたいか、将来的に妊娠・出産を希望するかどうかについて、最近じっくりと考える時間はありましたか?
もし妊娠・出産を希望するのであれば、健康づくりにはより一層気を配らなければなりません。安心して出産・育児をしていくには、パートナーと話して意識を合わせておくことも必要でしょう。まずは、改めて将来のことを考えることから始めてください。
ステップ2:未来のために生活習慣をチェック
・バランスの良い食事をこころがけよう・食事とサプリメントから葉酸を積極的に摂取しよう
・適正体重をキープしよう
・毎週150分の運動をしよう。こころもからだも活発に。
健康な体は正しい生活習慣によってつくられるといっても過言ではありません。毎日の食事の内容や運動量を見直し、上記のチェックをすべてクリアできるようにがんばってみましょう。
とくに妊娠を希望する方に知ってほしいのが、ビタミンの一つ「葉酸」です。妊娠前から十分な量の葉酸を摂ることで、赤ちゃんに先天性の異常(二分脊椎)が起こる可能性を減らせることがわかっています。
葉酸はほうれん草・ブロッコリー・海苔などに多く含まれますが、水溶性ビタミンなので毎日継続して摂取しなければならず、食事だけでカバーするのはなかなか難しいもの。サプリメントならより手軽に、かつ確実に摂取できるので、ぜひ活用してみてください。
ステップ3:病気のリスクに備える
・感染症から自分を守る(風疹・B型/C型肝炎・性感染症など)・ワクチン接種をしよう(風疹・インフルエンザなど)
・生活習慣病をチェックしよう(血圧・糖尿病・検尿など)
・がんのチェックをしよう(乳がん・子宮頸がんなど)
・持病と妊娠について知ろう(薬の内服についてなど)
健康を維持するには、まず自分の体の状態をよく知ることが欠かせません。隠れている病気はないか定期的にチェックし、またワクチン接種などで感染症予防にも努めましょう。
風疹は、妊娠初期に母体が感染すると、35~50%ほどの確率で、赤ちゃんが先天性風疹症候群(主に白内障、先天性心疾患、難聴を発症)になる可能性があります。
こちらでご紹介した以外にも、意識したいポイントはたくさんあります。
「国立研究開発法人 国立成育医療研究センター」のホームページには、女性用と男性用それぞれの「プレコン・チェックシート」が掲載されています。あわせて確認してみてください。
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/pcc_check-list.html
リスクに備えるため、少しずつ自分の体について考えてみよう
近年、初産の平均年齢は上昇傾向にあります。医学的な事実として、20代での出産に比べ、年齢が高い妊娠・出産では、いろんな合併症が増えることがわかっています。だからこそ今の時代、妊娠・出産前の健康管理はより重要になっているといえるでしょう。
また、現代は女性の生き方が多様化し、以前のように「妊娠・出産だけが女性の人生」という風潮はなくなりました。一人ひとりが自分にとって幸せな将来とはどんなものかを考え、その実現に向けて健康づくりに取り組む必要があります。
今こそ、ぜひプレコンセプションケアに取り組んでみてください。