HEALTHCARE : 健康
DATE : 2022.09.26
生理痛やPMSは「我慢しないこと」が大事! 上手に付き合う方法
月経前症候群(PMS)や生理痛の症状、それによって感じるストレスの程度は、同じ女性であっても人それぞれ異なります。大切なのは、自分の感覚としっかり向き合い、生理前や生理中でも快適に毎日を過ごす方法を見つけること。日本産科婦人科学会 専門医の窪田真知先生に上手な付き合い方について教えてもらいました。
今回教えてくれるのは……
PMSや生理痛の症状や重さが人によって違うのはどうして?
まず、月経前症候群(PMS)というのは、月経前に心や体の不調を感じる症状のこと。一方、生理痛というのは、腹痛や腰痛を含む痛みのことを指します。
どんな症状が現れるか、またその程度は、本当にひとそれぞれ。なぜなら、人間の体は十人十色だから。生まれつきもち合わせた体質、成長する中で培ってきた生活習慣、現在のライフスタイル……すべてに個人差があるので、PMSや生理痛だって一人ひとり差が出ます。
ですから、「生理は病気ではないのだから、我慢できないのは甘えだ」なんてことは決してありません。
そもそも、痛みというネガティブな感覚が人生においてプラスに働くことは断じてなく、痛みに耐えることで我慢強くなることもありえない。よくいわれる「女性は男性より痛みに強い」という言説も、医学的な根拠のない迷信です。
なお、生理前の精神的な不調が強い場合は「月経前不快気分障害(PMDD)」、生理中の症状がひどく日常生活に支障をきたす場合は「月経困難症」という病名がつくこともあります。
◆生理前(生理前3~10日間ほどに出やすい)
精神神経症状:情緒不安定、不安、イライラ、抑うつ、眠気、集中力の低下、睡眠障害
自律神経症状:食欲不振・過食、のぼせ、めまい、倦怠感
身体的症状:腹痛、腰痛、むくみ、頭痛、お腹の張り、乳房の張り
◆生理のとき
腹痛、腰痛、頭痛、消化器の不調
「生理で薬を使うのは体によくない」というのは本当?
いつもの自分でいられないと感じたときは、婦人科で医師に相談しよう
PMSや生理痛と上手に付き合うための選択肢はたくさんある
あまり知られていませんが、PMSや生理痛には、上手に付き合うためのたくさんの方法があります。今日からすぐに始められる「生活習慣からのアプローチ」と、医師による診断のもと行う「薬によるアプローチ」の2つをご紹介します。
生活習慣からのアプローチ
毎日の暮らしの中で少し工夫するだけで、症状の緩和につながる可能性も。たとえば、次のようなアクションを起こしてみましょう。② 自分のリズムを知る
③ 心地いいと思えるセルフケアを探す
④ 食事や生活習慣を意識してみる
⑤ 普段から胃腸の調子を整えておく
⑥ 健康的な体づくりに取り組む
①は「認知療法」といわれるやり方で、体や心の状態の変化を観察し、記録することで理解を深めます。そして、②いつ頃にどんな症状が出やすいのかなど自分のリズムをチェックし、③つらい期間は無理をしないように心がけ、気分転換やリラックスする時間をつくるといいでしょう。入浴やアロマセラピー、軽い運動などがおすすめです。
④食事や生活習慣では、カルシウムやマグネシウムを積極的に摂取し、アルコール、喫煙は控えましょう。よくカフェインも控えるべきだといわれますが、利尿作用によってむくみを軽減してくれるため、適量なら助けになることも。体の様子を見ながら判断してください。また、意外かもしれませんが、⑤胃腸の調子を整えると生理軟便の症状を緩和できる可能性があります。必要に応じて整腸剤なども活用しながら、胃腸の状態改善に取り組んでみてください。
それから、⑥体づくりもぜひ意識してほしいポイントです。痩せすぎは体が冷えやすくなり、症状が強く現れることにつながるので、筋肉量を増やすなど健康的な体を目指してください。
薬によるアプローチ
次のような薬によって、PMSや生理と上手に付き合っていく道を探ります。まずは婦人科を受診してください。「低用量経口避妊薬(OC、低用量ピル)」「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)」などの排卵を一時的に止める薬を服用すると、女性ホルモンの分泌の変動がなくなり、症状を抑えることが可能です。なお、排卵は服薬を中断すれば再び開始し、その後の妊娠に影響はありません。
② 症状を抑える薬
鎮痛剤やむくみを解消する薬、気分を安定させる薬など、該当症状をピンポイントで抑える薬もあります。
③ 漢方薬
症状を相談し、それに合わせた漢方薬を処方してもらいます。基本的に妊娠を阻害するものではないので、排卵を止める薬と違い、妊活中でも活用を検討できます。
悩んでいる症状や直近の妊娠希望の有無などを伝え、どんな方法が合うか医師と一緒に考えてみましょう。なお、人によって負担に感じる投薬回数や費用はさまざま。ライフスタイルや予算についても伝えておくと、より自分に合った提案を受けられます。
また、薬の服用にあたってはいくつか注意点があるので、必ず医師の指示に従って飲むようにしてください。たとえば①については、喫煙習慣がある方や肥満の方、年齢によっては服用できないケースがあります。②の中には、婦人科だけでなく心療内科などの協力が必要になるため通院の負担が大きくなるものや、自分で勝手に服用を中断できないものもあります。
生理のために、あなたが損をする必要はありません
現代女性は、妊娠回数が減った分、生理の回数が増えています。閉経を50歳とした場合、一生のうち、約450回月経がある計算です。日数にすると閉経まで実に約6年間もの時間を月経で過ごしている(月経日数が平均5日間とした場合)ことになります。
こんなに長い時間を、我慢して過ごす必要はありません。みなさんがもし「生理のせいで損をしている」と感じているなら、これ以上無理をせず、婦人科に相談するなど対策することをおすすめします。生理のために快適な生活を諦めないでください。