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DATE : 2023.05.11

生理トラブルをサポートしてくれる「ピル」の基礎知識

みなさんは、ピルに対してどんなイメージをおもちでしょうか?
ピルは、重い生理(=月経)やPMS症状に悩む方の心強い味方になってくれる薬です。しかし、「避妊用の薬で、自分には関係ない」「体に悪そうで怖い」など、誤った理解をしている方は少なくありません。
自分らしいライフデザインをするための選択肢のひとつとして、ぜひピルについての正しい知識を身につけてください。

今回教えてくれるのは……

取材・監修:日本産科婦人科学会専門医
日本医師会認定産業医資格
「さくま診療所」スマルナ所属医師
窪田真知 先生


福岡大学医学部を卒業後、大学病院や福岡赤十字病院に所属し、臨床経験を積む。幅広い年代の患者の診療にあたる傍ら、2015年からは嘱託産業医としても活動。学生向けの講演や市民講座で講師を務めることも。  

「ピル」に怖いイメージをもっていませんか?


日本では、ピルに対してネガティブなイメージをもっている方がまだまだ多くいらっしゃいます。その背景には、ピルや女性の体について、知識を得られる機会が少ないことがあると考えられるでしょう。ピルの効果や特徴、生理トラブルのつらさなどが社会に理解されていないため、過剰な恐怖心や、生理を薬でコントロールすることへの罪悪感が生まれているように思います。

また、日本では治療用ピルよりも先に避妊用ピルが認可されており、「ピル=避妊薬」という認識が根強く残っています。それが「性に奔放な女性が飲む薬」という誤った認識につながっていると考えられます。

しかし、ピルは生理がある年代の女性たちが、自身の妊娠や健康状態をコントロールするために選べる有益な選択肢のひとつです。間違ったイメージに惑わされず、正しい知識を身につけて、ぜひ上手に活用してください。
 

「ピル」の種類


日本では、ピルを使用目的によって2つのカテゴリに分類しています。

① 避妊を目的として服用するピル:OC
経口避妊薬のことで、保険は適用されず、自費での購入が必要です。

② 治療を目的として服用するピル:LEP・中用量ピル・ジエノゲスト製剤
月経困難症や子宮内膜症、PMS症状の治療のために使われ、保険が適用されます。

今回の記事では、治療用のピル「LEP」について紹介します。

ピルの種類

ピルとひと口にいっても、配合成分の種類や量の違いによって名称が異なります。LEPとしては、以下の2つが使われることが多いです。

・超低用量ピル
配合されるエストロゲン(女性ホルモン)の量が最も低いタイプ。治療に使用されます。

・低用量ピル
超低用量ピルに比べるとエストロゲンの配合量がやや多いタイプ。避妊と治療、どちらにも活用されます。

ちなみに、「中容量ピル」は「低用量ピル」よりもさらにエストロゲンの配合量が多く、日本ではLEPが認可されるずっと前から治療薬として採用されてきたピルです。「ジエノゲスト製剤」はエストロゲンではなく、もうひとつの女性ホルモンであるプロゲステロンのみを含むタイプ。諸外国では「ミニピル」と呼ばれ、おもに治療で採用されます。  

「ピル」を飲むと、なぜ生理トラブルが改善するの?

では、なぜピルを飲むことで生理トラブルの改善が期待できるのでしょうか?
そもそも生理とは、排卵が起きたものの妊娠しなかった場合に、妊娠に備えて厚くなっていた子宮内膜を体外に排出する現象です。しかし、ピルを飲んだ場合、排卵は起こらず、子宮内膜もあまり厚くなりません。結果的に生理(ピル休薬中に起こる出血は、正式には消退出血といいます)が軽くなり、それに伴う痛みやトラブルも少なくなるのです。


ピルはどのくらいの期間飲み続ければいい?

ピルを服用するにあたり、「ピルを飲む=生理トラブルを治療できる」と認識されている方が多くみられます。しかし正しくは、「ピルを飲むことで生理そのものをコントロールしている」のです。そのため、ピルは妊娠を希望するまで服用するものと考えてもらえればと思います。

もちろん途中でやめることも可能ですが、そのときに生理トラブルの状態がどうなっているかは、年齢や体のコンディションの影響を受けます。  

「ピル」を飲むことで期待できるメリットとデメリット


では、ピルを服用することで具体的にどんな変化が起こるのでしょうか?
ほとんどすべての薬剤にはメリットとデメリット、気をつけなければならないことがあり、それはピルも同じです。ピルを飲む際は、医師の指導のもと、血栓症リスクを上げないよう、喫煙をしない、適正体重を保つなど、服用規定を守る必要があります。


メリット

・経血量・日数の減少、貧血の改善
子宮内膜が厚くならないので、経血(消退出血)の量、日数ともに少なくなります。
選択する薬の種類や体質によっては、生理を数か月ごとにできます。
・生理周期がはっきりわかるようになる
リズムが整うため、予定を立てやすくなります。
・生理痛の改善
・PMSの軽減
・子宮内膜症の治療・予防
・卵巣がんのリスクを減らす


デメリット

・副作用が出ることがある
不正出血や吐き気、頭痛、むくみ、乳房の張りなど
・毎日、飲み忘れなく服用が必要
・血栓症のリスクが上昇することがある


ここでデメリットとして挙げた副作用は、服用開始から3カ月ほどで落ち着くことがほとんどです。副作用が続く場合は、薬剤を変更したり、漢方を併用して症状を落ち着けたりといった対処ができます。医師と相談しながら、自身に合うピルを見つけてください。  

「ピル」の素朴な疑問に一問一答


ピルについてよく耳にするいくつかのウワサ。医学的にみると、その真偽のほどはどうなのでしょうか?


Q 一度ピルを飲むと、服用を止めても自然な生理がこなくなる?

服用をやめると、遅くとも2~3カ月後には自分の生理がきます。ピルの影響で生理が永久に止まってしまうことはありません。


Qピルを飲むと不妊症になる?

特に学生さんが服用する場合、保護者の方から「将来の妊娠に影響はないですか?」と聞かれますが、ピルが原因で不妊症になったという医学的な報告はありません。


Qピルの服用は卵巣のアンチエイジングになる?

なりません。排卵を止めることは、卵巣のエイジングとは無関係です。


Qピルを飲むと太りやすくなる?

副作用のひとつに体重増加はありますが、LEP製剤(超低用量ピル、低用量ピル)の服用で起こる確率は低いとされています。  

「ピル」はライフデザインのための選択肢のひとつ

現代の女性たちは、男性と同じく社会的な活動(勉学も含め)を期待されているなか、約8割の方が生理のトラブルに悩む生活をしています。
今、生理が負担になっていると感じているのなら、我慢せずに婦人科にかかり、医師と一緒に上手なコントロール方法を検討しましょう。生理トラブルに悩まされることなく、あなたらしい毎日を過ごしてください。

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