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HEALTHCARE : 健康

DATE : 2019.05.16

脱毛、肌のくすみ。でも、美しさをあきらめたくない。~乳がん経験者座談会 [第4回]~

乳がんの経験がある女性たちが、本音で語り合う座談会。「日々の暮らし」をテーマにした第3回では、家事の負担をいかに軽くするか、毎日頭を悩ましていることが伺えました。
第4回のテーマは「美容」。乳がんになって、外見の変化に悩む人も多いのでは。抗がん剤の副作用による、髪・まつ毛・眉毛の脱毛、肌のくすみ、爪の傷み……。女性にとっては大問題です。座談会に参加した彼女たちも、さまざまな方法で、美容に取り組んでいます。

座談会メンバー プロフィール


進行役(写真中央)
ファイナンシャルプランナー 黒田尚子さん
各種セミナーや講演、新聞・書籍・雑誌・Webサイト上での執筆、個人相談など、幅広く活動。がんをはじめ、病気に対する経済的備えの重要性を訴えている。
自身も、2009年12月に乳がんの告知を受け、右乳房を全摘出。その後、インプラント法で乳房を再建。2011年3月に乳がん体験者コーディネーター資格を取得。
家族:夫、娘(中学生)

参加者 (写真左から)
一関加奈女さん(40代)
2016年12月に乳がんの告知を受ける。両乳房全摘出し、リンパ節郭清、抗がん剤とホルモン療法で治療。現在もホルモン療法を続けている。
職業:大学病院の秘書。 家族:夫

内田美奈さん(30代)
2014年12月に乳がんの告知を受ける。左乳房全摘出し、ホルモン療法で治療。その後、インプラント法で乳房を再建。現在もホルモン療法を続けている。
職業:動物病院の看護師兼花火師。 家族:夫、息子2人(中学生・小学生)

附田香織さん(40代)
2017年11月に乳がんの告知を受ける。左乳房全摘出し、組織拡張器(エキスパンダー)を同時挿入。抗がん剤で治療。もうすぐ自家組織で乳房再建の予定。
職業:アパレル販売会社社員兼フリーのヘアメイク。 家族:シングル

桜林芙美さん(30代)
2015年12月に乳がんの告知を受ける。左乳房全摘出し、リンパ節郭清、抗がん剤・放射線・分子標的薬で治療。その後、肺への転移がわかり、抗がん剤治療を経て、現在は分子標的薬で治療。
職業:ダンス関係アシスタント。 家族:娘3人(小学生・幼稚園)、両親、犬、猫

ウィッグを楽しんで、脱毛期を乗り越える。


黒田:女性としては、美容は大いに気になりますよね。特に気になるのが、抗がん剤治療による脱毛の副作用ではないでしょうか。どんなウィッグを使いましたか?

一関:ウィッグは、これまでに7個購入しました。1個は、もともとのヘアスタイルに近い、高価なものです。地元の美容院で昔から担当してくれている美容師さんが、すごくウィッグに詳しい方だったので、その方にアドバイスしていただきました。その他のウィッグは、ネットで購入した3000円から5000円くらいのお手頃なものです。ショートからロングまで揃えて、その日の気分で選んでいます。

附田:私も、10個くらいお手頃なウィッグを購入しました。私、アパレル販売会社に勤めているんです。まわりはオシャレ大好きな人がいっぱい。私も、脱毛のせいではなく、オシャレでいろいろウィッグを楽しんでると思われているみたい。

桜林:私は、3000円から1万円台のものを、5個購入しました。買ってきてそのままつけることはほとんどなく、自分に合うよう、ハサミを入れちゃうことも。つむじが不自然で気になるときは、カチューシャや髪留めを使って、うまく隠すようにしています。

黒田:今日は、ご自身の髪ですか? くるっとカールしているの、お似合いですね。

桜林:本来はまっすぐな髪なのですが、脱毛後伸びてきた髪が、くるくるしちゃって。スタイリング剤でなんとか落ち着かせたけど、寝起きはアフロみたいなんです。今担当してくれている美容師さんが、病気による脱毛を経験している人で、こうした悩みに詳しいので、いろいろアドバイスをいただいています。発毛後は頭皮や髪がデリケートなので、しばらくカラーやパーマはしないほうがいいって言われました。

一関:私も、脱毛後に生えてきた髪が、くせ毛みたいにくるくるなんです。あと、以前はなかった白髪も……。

黒田:血流のせいなのかな? 本来美容って、ゼロをプラスにするものなのに、病気するとマイナスをまずゼロにするところから、始めないとならないですもんね。でもみなさん、ウィッグやくるくるに生えてきた髪でのオシャレを楽しんでいますね。とても素敵です!

肌のくすみ、眉とまつ毛の脱毛はメイクでカバー。


黒田:治療の副作用による、肌のくすみ、眉やまつ毛の脱毛も、女性には大きな問題ですよね。

一関:私は、資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンターが開催している「がん患者さんのための外見ケアセミナー」に参加しました。ここで教わったことが、とても役に立ってます。

黒田:どんなセミナーなのですか?

一関:外見変化を目立たなくするメイクの方法を教えてくれるんです。スキンケアの方法から、きちんと学べるんですよ。くすんだ肌をどうカバーして明るく見せるか、眉毛やまつ毛が抜けてしまったのをどうカバーするか、黒ずんで割れやすくなった爪をどう守るか……など、いろいろ教わりました。

黒田:ベースとなる自眉がないと、きれいに眉を描くのさえ難しいですもんね。抗がん剤治療を受ける前に、メイクした顔の正面写真を撮っておく人も多いですし。

一関:眉毛の正しい位置の見つけ方も教えていただきましたよ。まつ毛がなくて、マスカラが塗れない分は、しっかりアイラインを入れて、カバーしましょうとか。

附田:私は、ヘアメイクの仕事もしているんです。私自身に、抗がん剤治療による副作用が現れたとき、同じ立場の人たちを呼んで、メイクセミナーを開きました。自分の顔を使って、実践で伝えられればと。

黒田:それはすごい! 教えてもらった人たちも、わかりやすかったでしょうね。プロだからこそ、伝えたいメイクアドバイスってありますか?

附田:肌がくすむと、明るいカラーのファンデーションを使いたがる人が多いのですが、本来のカラーより一段暗いのを使ったほうが自然に見えるんですよ。

黒田:そうなんですか! まったく知らなかった。勉強になります。

意外な大敵、乾燥とホットフラッシュ。


附田:抗がん剤の治療中って、肌がひどく乾燥しますよね。だから入浴後すぐに全身にボディローションやクリームを塗って、保湿することも大切なんです。

黒田:そうなんですか? 私は抗がん剤治療はしていなくて、ホルモン治療のみ。いつも、顔にはクリーム塗るけど、身体はざざっとローション塗った程度だったかも。

附田:だめだめ、そんなんじゃ! 適当でなく、朝晩しっかり、きちんと全身に塗る。しっかり保湿することが、肌の乾燥だけでなく、症状に影響することもあるんですよ。私は、手足症候群が出やすい抗がん剤での治療だったのですが、治療の1週間前からせっせと全身を保湿したら、症状がまったく出ませんでした。手を洗うたびに、ハンドクリームを塗るのも習慣になりました。

黒田:背中も? 背中って、自分じゃ塗れないですよね。いちいち、娘に頼まないと……。

附田:「セヌール」って知ってますか? 塗ることに特化した孫の手なんです。これで、背中まできちんと保湿できますよ。

桜林:鼻毛が抜けるせいか、鼻の中もすっごく乾燥しませんでした? 綿棒で、鼻の中にせっせとワセリン塗ってました。

一関:私は、ホルモン療法の影響で、ホットフラッシュがひどかったです。予想しないときに起きるんですよね。

内田:私もです。季節に関係なく、いきなりカーッと身体が熱くなって、ドバーッと汗が出て止まらなくなるんです。だから、今の職場では、冷蔵庫の中に冷却ジェルを常備し、着替え用の肌着やタオルも置いています。

桜林:乳がんになって、私にとっての美容の意味が少し変わってきたかも。美しく見せるためだけでなく、自分の身体を守るためにも、美容が必要になるんですよね。

愛用のブラジャー使えない?


桜林:ブラジャーは、これまでと同じのは使えなくなりました。パッドを入れれば使えるかな?と思ったのですが、どうしてもずれてくるし、ワイヤーはあたるし。

附田:ブラジャーは前開きじゃないとだめですね。でも、患者向けのブラジャーは、高価なうえにかわいくないものが多い。

桜林:やっぱり、ユニクロのブラトップ、最強だったかも。

一同:(うなずく)

黒田:以前から使っていたブラジャーは、ワイヤーを抜いて使っているという方もいましたよ。今あるものを工夫して使うことも大切ですよね。治療に備えて、下着だけでなく、生活にまつわるものすべて買い揃えて準備するとなると、本当に大変。入院前にいろいろと買い揃えたけど、結局使わなくてムダになったという人もいます。どうしても必要になったら、買えばいいんですよね。


美しく見せるためだけでなく、自分の身体を守るためにも、美容が必要になる。その言葉が印象に残りました。病気になっても「きれい」をあきらめたくない。その気持ち、私たち編集部もよくわかります。次回、第5回のテーマは「お金」。がんにかかるお金は、治療費、入院費だけではないんです。

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取材協力:一般社団法人ピアリング

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