HEALTHCARE : 健康
DATE : 2018.10.15
乳首がかゆいのはどうして?かゆみの原因と知っておきたいセルフケア
乳首のかゆみは、なかなか人に相談しにくいデリケートな問題。かゆいと感じているにもかかわらず、放置してしまうこともあるかもしれません。けれど、なんらかの病気がかゆみの原因となっているケースもあるため、注意が必要です。乳首がかゆくなる原因やかゆみの治し方について、医師監修のもとご紹介します。
乳首がかゆい原因は?
炎症を起こしている
乳首には皮脂腺が多く、皮脂を分泌することで乳首を守っています。ところが、なんらかの理由で皮脂の分泌バランスが乱れると、炎症を起こしてかゆみなどのトラブルを招いてしまいます。また、ブラジャーと乳首が擦れるなど、外からの刺激を受けて炎症が起き、かゆみを感じることもあります。これは刺激性接触皮膚炎と呼ばれ、誰にでも起こりうるものです。肌がかぶれた状態になり、赤みのほか、ひどいときには皮膚の表面に水ぶくれができることもあります。
このほか、なんらかの物質に対するアレルギー反応が出て炎症を起こし、かゆみなどの症状が現れることもあります(アレルギー性接触皮膚炎)。
皮膚の乾燥
空気が乾燥する季節は、乳首も乾燥しやすくなります。なにもケアしないまま放置していると、乾燥が進んでますますかゆみが強くなり、ときには乳首表面の皮がめくれることもあります。女性ホルモンの乱れ
月経前に女性ホルモンの分泌が増えることでホルモンバランスが乱れ、胸の張りや痛みのほか、人によっては乳首周辺にかゆみを感じることがあります。通常であれば、月経が始まると症状はおさまります。乳がんの初期症状
乳首を中心に赤い腫れやただれ、出血、かさぶたなどの症状が現れた場合は、乳房パジェット病の可能性が考えられます。乳房パジェット病になると体内でパジェット細胞というがん細胞が増えていきますが、最初の頃は皮膚の奥のほうまではいかず表面にとどまっています。乳房パジェット病は乳がんの一種であり、かなり珍しい病気です。通常は片側の胸だけに発症します。両側の胸や男性にも発症することはありますが、とてもまれなケースです。乳がんの代表的な症状であるしこりはみられず、適切に治療すれば順調に治っていきます。
乳首のかゆみはどうやってケアすればいい?
このように、乳首のかゆみと一口にいっても原因はさまざま。日常生活を通してかゆみを防ぎつつ、かゆみが起こったときは原因に合わせて適切にケアしましょう。
乳首のかゆみを防ぐために
接触皮膚炎によってかゆくなっている場合は、まずはなにより原因を取り除くことが大切。あわせて、刺激をおさえる工夫も欠かせません。たとえば下着であれば、シルクや綿を素材に使用したもののほうが乳首への刺激をおさえられます。暑い季節は汗や蒸れによる影響を受けやすいため、胸のあたりに熱がこもらないよう、通気性のよい服装を心がけてください。乾燥が原因のかゆみには、ていねいな保湿ケアが必要不可欠です。敏感肌用の保湿剤などで刺激を与えないよう注意しながら、やさしく保湿しましょう。
また、女性ホルモンのバランスは生活習慣の影響を受けやすいことがわかっています。夜ふかしや朝寝坊といった不規則な生活を避け、バランスのよい食事を心がけて質のよい睡眠を十分にとることも、かゆみの予防に役立ちます。
かゆみが長引く場合は、乳房パジェット病などの病気の可能性も考えられるため、皮膚科や婦人科を早めに受診してください。
もし、かゆくなってしまったら
かゆみを感じるとつい手でボリボリとかきたくなりますが、ここはグッと我慢。かきむしることで乳首の表面が傷つき、さらに炎症を起こしてかゆみが増してしまいます。かゆみの原因となるものが明らかな場合は、すぐに取り除きましょう。かゆみの原因となるものが乳首の表面に付着していることもあるので、やさしく洗い流して清潔な状態を保ちます。
また、乳首が乾燥するのもよくありません。乾燥すると皮膚のバリア機能が低下して外部からの刺激を受けやすくなるため、十分な保湿ケアも忘れずに行いましょう。
どうしてもかゆくて我慢できないときは、ガーゼにくるんだ保冷剤などで乳首を冷やせば、一時的ですがかゆみをおさえられます。ただし、冷やしすぎには十分に注意してください。
病院で受けられる治療は?
炎症が原因の場合
医師の指導のもと、ステロイド外用薬をかゆみのある部位に塗り、症状をおさえていきます。炎症が強い場合は、ステロイドの内服や高ヒスタミン薬などを服用することもあります。ただし、炎症の場合は一度治ってもまたすぐに症状を繰り返すことも少なくありません。かゆみのもととなる物質を避けるなど、日常生活を通して再発を防ぐことが大切です。
乳房パジェット病が原因の場合
乳房パジェット病と診断された場合は、乳がんとしての治療が行われます。治療法には、手術や放射線などがん細胞をピンポイントに取り除く「局所療法」と、薬物などを用いて全身にアプローチする「全身療法」の2つがあります。乳がんは、治療法が比較的多い疾患です。医師と相談しながら、年齢や体質、病状、ライフスタイルなどに合わせて最適な治療法を選択しましょう。
乳首のかゆみは、乾燥などの肌トラブルが原因となって起こる場合もあれば、なんらかの病気の影響で現れる場合もあるため、放置せずにきちんとケアすることがとても大切です。かゆくなったからといってそれほど神経質になる必要はありませんが、清潔にしたり十分な保湿を行ったりしてもかゆみがおさまらないときは、皮膚科や婦人科を早めに受診して治療を受けてください。
PROFILE
【監修】吉井 友季子先生YUKIKO YOSHII
大阪市立大学医学部卒業。H11年大阪府吹田市江坂で吉井クリニックを開院。内科、外科、婦人科疾患、健診や予防医療、美容医学に力を入れ成果をあげている。著書多数。健康・美容に関して雑誌、新聞でコメントを求められることも多い。
https://www.yoshiiclinic.jp/