HEALTHCARE : 健康
DATE : 2020.10.20
「妊活」って何から始めればいいの? 不妊治療の基礎知識から女性特有の病気との付き合い方までを解説!
子どもがほしいと思った時、妊娠に向けて積極的に行動する「妊活」。しかし、「妊活って何をするの?」「不妊治療にはどんな方法があるの?」「婦人科系の病気と妊活は両立できる?」と、疑問や不安を抱える人も多いのではないでしょうか。そこで今回は医師の監修のもと、妊活や不妊治療の基礎知識をご紹介します。
「妊活」とは? どんな方法があるの?
不妊治療を始める前にできること
妊活と言うと、病院に通って不妊治療を受けるというイメージが強い人も多いのではないでしょうか。でも、その前に準備できることがあります。
1.妊娠・出産について正しい知識を得る
妊娠や出産について間違った知識を持っていると、妊娠まで遠回りになってしまったり、パートナーと行き違いが生まれてしまったりすることも。妊娠に適した年齢やタイミングがあること、女性だけでなく男性にも不妊の原因がある可能性があることなど、妊娠に関する正しい知識を持てるように調べてみましょう。2.夫婦で妊娠・出産について話し合う
妊娠・出産によって生活は大きく変わります。夫婦で何人くらい子どもがほしいのかライフプランを話し合ったり、妊娠中や育児中の生活のイメージを共有したりしてみましょう。さらに、自然妊娠を望むのか不妊治療を受けるのか考えたり、もし不妊治療を始めるとしたら時間や費用の面でどこまで治療を続けられるかイメージをすり合わせたりと、夫婦で出産や妊娠についてよく話し合うことが、妊活の第一歩にもなります。3.自分の体の状態を知る
妊活を考える時、まず始めてほしいのが基礎体温をつけることです。基礎体温からは、月経の周期や、排卵が規則正しく行われているかどうかなど、妊娠するために重要な体の状態を知ることができます。4.健康的な生活を心がける
不規則な生活を続けているとホルモンバランスが乱れて排卵の周期に影響することがあります。1日3食、栄養バランスのよい食事をとる、適度な運動をする、早寝早起きを心がけるといった規則正しい生活を心がけて、心身の健康を保ちましょう。出産や育児に備えての体力づくりにも役立ちます。5.医療機関で体のメンテナンスをする
妊活を始める前から、定期的に婦人科の検診を受けて、自分の体の健康状態を知っておくことができると安心です。不妊治療の基本的な流れや費用の目安
「不妊」とは、妊娠を望む健康なカップルが1年間、避妊をせずに性生活を行っているのに妊娠しないことを言います。妊娠を望んでいるのに妊娠しないという場合、さまざまな要因が妊娠を阻害している可能性が考えられるため、医療機関でその原因を調べることが不妊治療の第一歩です。
妊娠に向けての治療は大きく分けて「タイミング法」「人工授精」「対外受精」の3つがあり、タイミング法から始めてステップアップしていくのが基本ですが、検査の結果によっては人工授精から始めたり、体外受精をすすめられたりすることもあります。
1.初診・検査
初診時には、いつ頃から妊娠を望んでいるのか、おたふく風邪や風しんにかかったことがあるかどうかなど、問診で詳しく確認します。内診や超音波検査で、子宮や卵巣に異常がないか確認することもあります。基礎体温の記録があれば、今後の受診の参考になるため持参しましょう。その後、数回通院して、血液検査や尿検査でホルモンを調べ、排卵や卵巣機能の状態をチェックしていきます。男性は精液を採取して、精子の濃度、運動性や奇形率などを調べます。
2.タイミング法
詳しい検査で大きな異常が見つからない時は、タイミング法からステップアップしていくのが一般的です。タイミング法では、排卵が近づいた時に受診して卵巣や子宮内膜の状態を確認し排卵日を特定します。最も妊娠しやすい排卵日の前後数日にタイミングを合わせて性交渉を持つことで、自然妊娠を目指す方法です。排卵のリズムが不規則な場合には、排卵誘発剤を使うこともあります。月に一度程度の通院が必要で、費用の目安は数千円から2万円程度です。タイミング法は保険が適用されるのが基本ですが、排卵誘発剤の使用で保険適用外になる場合や、病院によっては自費となる場合があるため確認が必要です。
3.人工授精
人工授精は、運動性の高い精子を集めてカテーテルなどで子宮に直接注入する方法です。精子と卵子が出会う確率を高めることで、より自然に近い形での妊娠が望めます。タイミング法で妊娠に至らなかった場合や、精子の活動性が低い場合、頸管に妊娠を阻害する因子がある場合にすすめられる方法です。短時間で終わり、麻酔も必要ないので、女性への負担が少ないとされます。費用は1回あたり2万円程度であることが多く、トライする回数は6回くらいが目安です。病院によって費用や回数に差があるためあらかじめ確認できると安心でしょう。
4.体外受精
体外に取り出した卵子と精子を受精させ、受精卵を子宮に戻す方法が体外受精です。タイミング法や人工授精からのステップアップや、精子に問題がある場合、卵管性不妊が考えられる場合などに適した方法です。排卵誘発剤を使うため体調の変化に考慮する必要があります。また、採卵したり受精卵を体内に戻したりと、女性の体の負担が大きい方法とされます。各種の検査などもあるため通院回数も多くなります。費用も他の治療に比べて高額で、30~100万円が目安。病院によって料金設定に差があります。体外受精について助成金制度がある自治体もあるので、チェックしておきましょう。
不妊治療と女性特有の病気の関係性
妊活を始めて、各種の婦人科系の検査を受けたことで、それまで気づかなかった病気が見つかることがあります。反対に、検診などで婦人科系の病気が見つかったことで、妊娠が可能なうちに妊活を始めようと考える人も。
妊活を通して見つかることが多い女性特有の病気には以下のようなものが挙げられます。
子宮筋腫
子宮の壁の筋肉が異常増殖してできたこぶ。良性の腫瘍。できた場所や大きさによっては、月経血の量が増えたり、月経痛が強くなったり、不妊の原因になったりすると言われています。30代の女性の3割に見られるものですが、子宮筋腫があっても問題なく妊娠・出産に至る人も多いとされています。子宮内膜症
子宮内膜とは子宮の内側にある粘膜のことです。排卵が起こると妊娠に向けて子宮内膜は厚くなり、妊娠に至らないとはがれて血液とともに排出され、月経が始まります。子宮内膜症とは、この子宮内膜のようなものが体の他の場所で増殖する病気。卵巣、骨盤内の腹膜、子宮と直腸の間などにできやすく、卵巣にできたものはチョコレートのう胞と呼ばれます。卵巣のう腫
卵巣の中に、腫瘍ができて水や油、ゼリー状のものがたまる病気。多くは良性の腫瘍で、腫瘍が小さいうちは自覚症状がないため気づきにくい病気のひとつです。のう瘍が大きくなるとしこりや、腹痛、腰痛を感じることも。さらに卵巣の根元がねじれる茎捻転を起こすことがあり激痛を生じます。症状によっては卵巣を摘出する必要があります。病気が見つかったからと言って、必ずしも不妊の原因に直結するわけではありません。病気を治療しながら妊活を続けられるかどうか、病気の治療を優先すべきかどうか、治療後に妊娠・出産が可能かどうか、医師とよく相談することが大切です。
ひと口に「妊活」と言っても、まずは自分たちにできることから始める人から、早い段階で体外受精にトライする人まで、その方法は人それぞれ。パートナーや医師とよく話し合い、自分たちに合った妊活のスタイルを探す姿勢が大切です。
PROFILE
【監修】吉井友季子YUKIKO YOSHII
大阪市立大学医学部卒業。H11年大阪府吹田市江坂で吉井クリニックを開院。内科、外科、婦人科疾患、健診や予防医療、美容医学に力を入れ成果をあげている。著書多数。健康・美容に関して雑誌、新聞でコメントを求められることも多い。
https://www.yoshiiclinic.jp/