HEALTHCARE : 健康
DATE : 2020.10.20
正常な月経(生理)と月経異常の違いとは?月経前症候群(PMS)についても解説
月経(生理)は長く付き合っていかなければならない現象ですが、気になることがあったり悩みがあったりしても、なんとなく人に話しづらかったりしますよね。痛みやイライラ、時期の不順など、月経の悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。月経のしくみや正常な月経・異常な月経の違いを知ることで、こうしたお悩みが解決されるかもしれません。この記事では医師監修のもと、月経のしくみや月経前症候群(PMS)の原因・対策、月経に異常がある場合に考えられる病気などについて解説します。
月経(生理)のしくみとは? 正常な月経と異常な月経の違いについて
まずは月経に関する基礎知識として、そのしくみや正常な月経・異常な月経の違いについて解説します。
月経のしくみ
女性にとっては一生のうち約40年間も付き合っていると言われる月経。ですがどうして月経がどのようにして起こるのかをきちんと説明できる人は少ないのではないでしょうか。月経異常や月経前症候群(PMS)について知る前に、まずは月経のしくみについて見ていきましょう。◆月経のしくみについて
女性の体は1ヶ月に1回、卵巣から卵子を排出(排卵)します。それに合わせて子宮内膜を厚くし、妊娠したとき受精卵が無事着床できるように備えます。しかし妊娠しなかった場合は、子宮内膜の厚くなった部分がいらなくなるため、はがれて血液と一緒に体の外へと排出されます。これが月経のしくみです。月経が起こる原因は、女性ホルモンの影響です。脳から分泌されたホルモンが卵巣に働きかけ、排卵が起こることで月経がおこります。脳からのホルモン分泌や卵巣への働きかけ、排卵など、この流れのどこかに異常があると、月経がうまく行われなくなってしまいます。月経のメカニズムについては、以下でもう少し詳しく見ていきましょう。
◆月経のメカニズムについて
月経の周期は、「月経初日~次の月経初日の前日」の期間で、25~38日間が正常周期と呼ばれています。この月経周期は、さらに大きく3つの期間に分けられます。
…卵子のもととなる原子卵胞が成熟卵胞になり、卵胞ホルモン(エストロゲン)を分泌することで子宮内膜が厚くなる。
・排卵期(卵子の排出期間)
…成熟卵胞から卵子が排出される。
・黄体期(卵子の排出後)
…排卵した卵胞が黄体に変わり、黄体ホルモン(プロゲステロン)をたくさん分泌することによって子宮内膜がより厚くなる。
月経に大きく関わる女性ホルモンは2種類あり、卵胞期に増える卵胞ホルモン(エストロゲン)の働きで子宮内膜が厚くなり、黄体期に増える黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きでさらに子宮内膜が厚くなります。妊娠しなかった場合は両方のホルモン分泌が低下し、子宮内膜がはがれ落ちて月経が始まります。
◆正常な月経と異常な月経について
月経のしくみを踏まえたうえで、正常な月経とはどのようなものかを見ていきましょう。・月経が正常な場合
正常な月経の場合、月経周期(月経初日~次の月経初日の前日)は25~38日間です。月経で出る血の量は通常15~75mlとされており、出血の持続期間は3~7日が正常範囲です。月経中には腹痛や腰痛、頭痛などの症状が現れますが、日常生活に支障がない程度であれば特に問題ありません。
・月経が異常な場合
月経周期が25日よりも短い、または38日よりも長い場合は、月経周期に異常が起こっています。頻繁に月経のような出血がある場合は「頻発月経」、月経周期が約40日になる場合は「稀発月経」、3ヶ月以上月経がない場合は「無月経」と呼ばれます。月経で出る血の量も、レバーのような塊が出る場合は「過多月経」といい、貧血を引き起こす恐れがあります。逆に血量が極端に少ない場合も「過少月経」と呼ばれます。出血の持続期間が8日以上続く場合は「過長月経」といい、月経前~月経中に腹痛や腰痛、頭痛や嘔吐などの症状で生活に支障が出る場合は、「月経困難症」という病気の可能性があります。いずれの症状も、当てはまった場合は早めに婦人科を受診しましょう。
月経前症候群(PMS)の原因・症状とは? 治療方法はあるの?
月経中よりも、月経前の期間に辛さを感じる方は「月経前症候群(PMS)」かもしれません。月経前症候群(PMS)とは何か、以下で見ていきましょう。
月経前症候群(PMS)とは
月経前症候群(PMS)とは、月経前に心や体の不調を感じる症状のことです。やけに落ち込みやすい・乳房がはって疲れやすいといった症状が現れますが、その症状は200種類以上にものぼり、同じ人でも月によって症状が変わることも。症状の程度が重い場合は、日常生活に支障をきたす場合もあります。またこれらの症状は、月経が開始すると和らぐ傾向にあります。原因
PMSの原因は、月経に大きく関わる女性ホルモンの「卵胞ホルモン(エストロゲン)」「黄体ホルモン(プロゲステロン)」が、周期によって急激に変動し、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことが原因だと考えられています。 ただし脳内のホルモンや神経伝達物質の異常はホルモンの影響だけでなくストレスなどによっても引き起こされます。たとえば、下記のような状況の場合、PMSの症状が重くなり生活に支障が出やすくなるといわれています。・真面目で完璧主義など、特定の性格や考え方
・タバコやお酒、カフェイン等の多量摂取をはじめとした乱れた食生活
・病気などによる自律神経の乱れや体力の低下
症状
PMSの症状は200種類以上とさまざまですが、代表的な症状は以下のようなものです。・精神的症状
憂鬱な気分になる、イライラする、怒りっぽくなるなど、普段よりも情緒不安定になりがちなのがPMSの症状の特徴です。ぼんやりして仕事に集中できないなどの不調も、PMSの症状である場合があります。
・身体的症状
乳房の張りや痛み、疲れやだるさ、頭痛や腰痛などもPMSの症状です。肌荒れ・ニキビやむくみ、体重が増加など、外見に表れる症状も。やけに眠くなったり、逆に眠れなくなったりと、さまざまな症状があります。
対策
PMSは女性ホルモンの変動が原因だと考えられているため、体の調子を整えることが対策になります。たとえば、バランスのよい食事を心掛けて栄養不足を解消したり、適度な運動でストレスや運動不足を解消したりするとよいでしょう。食事については、アルコールや塩分、カフェインを取りすぎないように注意し、できれば禁煙することが望ましいといえます。月経の頻度が異常な場合や月経痛がひどいときに隠れている可能性のある病気
月経の頻度が異常な場合や、症状があまりにひどい場合は、病気が隠れているかもしれません。そうした場合に考えられる病気について解説します。
月経の頻度が異常な場合に考えられる病気
・頻発月経…1ヶ月に2回以上月経がある状態です。排卵がない場合や、卵胞期や排卵前後期間が短い場合、月経ではなく不正出血である場合など、さまざまなパターンがあります。頻発月経の場合はホルモン治療が必要になりますが、更年期が原因であることも。まずは基礎体温をつけて排卵が行われているか確認しましょう。・希発月経…月経周期が39日以上など、長すぎる状態です。排卵が行われていればあまり問題ありませんが、ない場合は不妊症や無月経の原因になることも。その場合はホルモン治療を行う必要があります。
・過多月経…出血の持続期間が8日以上続く、レバー状の血のかたまりが出る、出血量が多く寝るのが怖い、などの状態です。ホルモンバランスの乱れが原因と言われていますが、子宮筋腫や子宮腺筋症といった病気が隠れている場合があります。
・過少月経…出血の持続期間が3日以内だったり、月経2日目なのにナプキンの交換が必要ないほど少量しか出血がなかったりする状態です。無月経の前触れであるケースもあり、ホルモン治療が必要になることもあります。
いずれも症状がひどくなるまで我慢せず、早いうちに婦人科を受診しましょう。
月経痛の症状がひどい場合に考えられる病気
・子宮内膜症…月経のある女性の10人に1人は発症するといわれている病気です。子宮内膜は子宮の内側にありますが、子宮の内側以外に子宮内膜のような組織が作られてしまい、月経のたびにはがれて出血するため強い痛みを感じます。月経困難症の場合、子宮内膜症も同時に見つかることが多いようです。・子宮筋腫…30歳以上の女性の20~30%が発症する、子宮にできる良性の腫瘍(しゅよう)です。月経に大きくかかわるエストロゲンによって大きくなると言われています。症状は生理痛の増大、生理時の出血量の増大などさまざまで、治療が必要かどうかは筋腫のできた場所や症状によります。
・子宮腺筋症…子宮内膜症のように、子宮内膜のような組織が子宮の筋肉内にできてしまう病気です。子宮筋腫同様、症状は生理痛の増大、生理時の出血量の増大などさまざまで、女性ホルモンの影響で大きくなります。子宮筋腫や子宮内膜症を同時に発症している場合もありますが、軽度の場合、治療は必要ありません。
月経に異常がある場合に隠れている病気は、女性ホルモンが原因となっている場合がほとんどです。病気を引き起こさないよう普段から健康的な生活を心がけ、症状が出ている場合はすぐに婦人科を受診しましょう。
まとめ
月経は女性ホルモンの影響で起こり、妊娠に備えて厚くなった子宮内膜がはがれ落ちることで始まります。月経周期や出血期間は正常範囲が決まっており、その範囲から外れた場合は異常が起こっていると考えられます。もし月経の頻度や症状に異常がある場合やPMSがひどい場合は、無理せずすぐ婦人科を受診しましょう。特に将来妊娠を望んでいる場合は、妊娠したい時期に困らないためにも、不調を感じたらすぐ婦人科を受診することが大切です。
PROFILE
【監修】吉井友季子YUKIKO YOSHII
大阪市立大学医学部卒業。H11年大阪府吹田市江坂で吉井クリニックを開院。内科、外科、婦人科疾患、健診や予防医療、美容医学に力を入れ成果をあげている。著書多数。健康・美容に関して雑誌、新聞でコメントを求められることも多い。
https://www.yoshiiclinic.jp/