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DATE : 2018.10.22

乳がん罹患者数はどのくらい?乳がんの原因と女性に乳がんが増えている理由

いま日本では乳がんを発症する女性の数が増えています。どうして乳がんが増えているのか、乳がんを発症する危険性を高める要因にはどんなものがあるのか、逆に、どんなことをすれば乳がんを発症する危険性が低くなるのか、医師監修のもと詳しく解説していきます。

監修:mammaria tsukiji院長 尹玲花先生 

増える乳がん罹患者数

日本で乳がんにかかる人はどれくらい増えているのでしょうか。その背景にはどんな理由があるのでしょうか。詳しくみていきましょう。

15年前に比べて日本の乳がん罹患者数は倍増

■女性の部位別罹患数と死亡数




日本では年々乳がんにかかる人の数が増えています。2003年でよそ4万3千人だった罹患者数(※1)が、2017年では約9万人に増加しているといわれています。また乳がんにかかる人は今後も増え、12.5万人くらいまで増加するのではないかと予測されています。
グラフを見ても分かるように、乳がんは女性が生涯でかかるがんの1位です。一方、亡くなる人が最も多いがんは大腸がんで、乳がんの死亡者数は5位です。つまり乳がんは「かかりやすいけれど、命を落とす確率は他のがんに比べて低い」ということがいえます。

※1 罹患者:病気になった人


乳がん罹患者数が増えている理由

乳がんにかかる人が増えている背景にあるのは、日本人女性のライフスタイルの変化です。
乳がんにはエストロゲンという女性ホルモンが深く関わっています。このエストロゲンが多量に分泌される時期が長いほど、乳がんのリスクも高くなるのです。

エストロゲンは初潮の後、子宮や卵巣が成熟するのにともなって分泌量が増え、妊娠・授乳期には分泌量が減少します。つまり、出産回数が多いほど体がエストロゲンの影響を受けることは少なくなるのです。晩婚・晩産・少子化が進んでいる現在の日本では、多くの女性が長期間エストロゲンにさらされており、これが乳がん増加の一因ではないかと考えられています。

さらに食生活の欧米化により栄養状態が良くなったことで、初潮が早く閉経が遅い人が増えています。これも、エストロゲンの影響を長く受け続けることとなり、乳がんのリスクを高めているといえるのです。 

乳がんにかかりやすい人とは?

一般的に乳がんは、食生活などの環境因子の影響が複雑にかかわって発症していると考えられていますので、何か特定のものが原因で乳がんになるということはありません。ただ、乳がんの発症リスクを高める要因は分かっていますので、知っておきましょう。

乳がんにかかりやすい人の要因


-食生活(肥満、アルコール摂取)

肥満は乳がん発症リスクを確実に高めるといわれています。世界的にみると閉経後の女性の肥満が、乳がん発症リスク高めることが確実になっています。一方日本人を対象とした研究では、閉経前であっても肥満が乳がん発症リスクを高める可能性があることが示されています。乳がんだけでなく、肥満はさまざまな生活習慣病のリスクを高めることになるので、太りすぎないように、BMI(※2)が25未満となるように自己管理することが大切です。
アルコールについては、どのように乳がんの発症に影響を与えるのかは分かっていませんが、飲む量が増えるほど乳がん発症のリスクを高めることが認められています。1日に1杯程度(※3)の飲酒はリスクにならないという報告もありますが、お酒は控えめに楽しむようにしましょう。

※2 BMI=体重(kg)×{身長(m)×身長(m)}
25未満が正常、25~30未満が過体重、30以上が肥満を定義しています

※3 日本酒なら1合(180ml)、ビールなら中ジョッキ1杯(500ml)、ワインならグラス2杯(200ml)


-喫煙

喫煙は乳がんの発症リスクを高める一つです。受動喫煙も、乳がん発症リスクを高める可能性があります。乳がんだけでなく、たばこは肺がんや多くの生活習慣病の一因でもありますので、禁煙に加えて他人のたばこの煙もできるだけ避けるようにしましょう。

-糖尿病

糖尿病の人はそうでない人に比べて、乳がんの発症率がおよそ1.2倍~1.3倍であるとされています。糖尿病と診断されている人や治療中の人は定期的に乳がん検診を受けるようにしましょう。

-経口避妊薬(ピル)

経口避妊薬(ピル)の長期間の服用は、乳がんの発症リスクをわずかながら高くする可能性があることが分かっています。

-初産年齢が30歳以上、授乳経験がない、初潮年齢が早い

初産年齢が30歳以上の人、授乳経験がない人、初潮年齢が早い人は、そうでない人に比べて乳がんの発症リスクが高いとされています。

-家系内に乳がんになった人がいる

自分の家系内に乳がん患者がいる場合、その患者と自分の血縁関係が近いほど、また乳がん患者が家系内に多くいるほど、乳がん発症リスクが高くなります。

上記以外にも、発症を高める要因がありますので、「乳がんは早期発見が大切」のページのチェックリストも参考にしてください。 

乳がんの発症リスクを低くするために

乳がんの発症リスクを高める要因を挙げてきましたが、逆に発症リスクが低くなるようなことはあるのでしょうか。最近の研究で分かってきた要因について解説します。

乳がんの発症リスクが低くなる要因

-食生活(大豆食品、乳製品)

大豆食品やイソフラボンの摂取で乳がん発症リスクが低くなることが、最近の研究で分かってきました。ただ、イソフラボンをサプリメントとして大量に摂取しても、乳がん発症リスクを下げることは証明されていません。イソフラボンは大豆食品から摂取するようにしましょう。
また、乳製品全般を多く摂取している人は摂取していない人に比べて乳がん発症リスクが少し低くなることが最近の研究で示されました。一方で脂肪を多く含む乳製品では乳がん発症リスクが高くなるとの報告もあり、どの程度の摂取で発症リスクが低くなるのかはまだ分かっていません。

-定期的な運動

閉経後の女性で、定期的な運動を行っている人は、運動量の少ない女性に比べて乳がん発症リスクが低くなるとされています。閉経前でも、肥満や生活習慣病の予防につながりますので、少し汗ばむ程度の歩行や軽いジョギングなどの有酸素運動を毎日10~20分程度行うことを心がけましょう。


セルフチェックを習慣に!

乳がんの発症リスクを高める要因、低くなる要因を挙げましたが、発症リスクが高くなる要因に当てはまるからといって必ず乳がんになるわけではありません。逆に、当てはまらなくても乳がんになる人はいます。どんな食生活や生活習慣がリスクを高めるのかを知った上で、セルフチェックを行い、いつもの乳房のようすを自分で確かめておくことが大切です。
セルフチェックの方法は、「月1おっぱいチェック」で写真と動画で分かりやすく説明しています。


定期的に検診を受けるのも大切

セルフチェックを行って、日頃の乳房の状態を確かめておき、その上で定期的に検診を受診することで、乳がんにかかっても早期の段階で発見することができます。40代以上の人はもちろん、先述した「乳がんにかかりやすい人の要因」にひとつでも当てはまる項目のある人は、定期的に検診を受けることを心がけましょう。

乳がん検診を受診する方法は、「自治体が実施する住民検診」「企業が行う企業検診のオプション」「医療機関が提供している人間ドック」の3つがあります。

「自治体が実施する住民検診」は、40歳以上のその地域にすむ住民が対象となり、触診、マンモグラフィ、超音波など厚生労働省のガイドラインに準じて、自治体が設定します。一般的には2年に1回、自治体から通知が届き、比較的安価に検査を受けられることが多いため、ぜひ積極的に受診することをおすすめします。


健康的な食生活と適度な運動は乳がん予防に限らず生活習慣病など他の病気の予防にもなりますので意識して行うようにしましょう。加えて、セルフチェックと検診の受診をすることで、乳がんにかかっても早期発見・早期治療につながります。

PROFILE

【監修】尹玲花先生REIKA IN

mammaria tsukiji院長
女性の役に立ちたいと外科医を志し、聖路加国際病院で乳腺診療に約10年間携わった後、女性のための乳腺クリニックを開設。キャリアを通して、患者さんに『寄り添う』ことをキーワードに診療にあたっている。
https://mammaria.jp/

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