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DATE : 2018.10.22

しこりの発見=乳がんではない?乳がんと間違いやすい“しこり”について知ろう

乳がんの自覚症状は、9割以上が痛みのないしこりの発見です。しかし、しこりがあったからといって乳がんと決め付けることはできません。乳がん以外でしこりができる場合にはどんなものがあるのか、医師監修のもと詳しく解説していきます。

監修:mammaria tsukiji院長 尹玲花先生 

しこりはなぜできる?

乳房にしこりを感じると、「乳がんかも……」と不安になると思いますが、すべてのしこりが乳がんというわけではありません。乳がん以外でもしこりができることがあるということを知っておきましょう。

しこりの原因

乳房はエストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの影響を受けて乳腺が大きくなるため、月経周期によって痛みやしこりを感じることがあります。生理前に乳房が張ったり、痛みを感じたりしたことがある人は多いのではないでしょうか。これは女性ホルモンの正常な変動の影響によるものです。

ただ、乳房にしこりや痛みを感じるとき、その原因が乳がん以外の乳腺の病気ということもあるので、月経周期に関係ないしこりに気付いたら、専門医を受診しましょう。 

しこりの症状とは



乳房にしこりがみられる乳がん以外の症状について、それぞれ解説していきます。どの症状についても、不安を感じるときは専門医を受診しましょう。

乳がんと間違いやすいしこりの症状と治療法

乳がん以外で乳房にしこりがみられる「乳腺症」「乳腺炎」「乳腺線維腺腫」「葉状腫瘍」について、それぞれの症状の特徴と治療方法を紹介します。

-乳腺症

30~40代の女性に多くみられる乳腺の良性変化です。しこりに加えて乳房の痛みや張り、乳頭からの異常分泌(乳頭から透明もしくは白色の分泌液が出る)が主な症状です。月経前に症状が増大し、月経後には縮小するという特徴があります。月経周期に連動するしこりや痛みについてはあまり心配ありませんが、月経周期に関係ないしこりや痛みがあったり、乳頭から血液が混じった分泌物が出たりする場合は乳がんが隠れている可能性もありますので、専門医を受診しましょう。

-乳腺炎

授乳期に多く発生する乳房の炎症で、乳汁が詰まることや細菌感染が原因です。赤い腫れや、痛み、膿、しこりなどがみられます。発熱や悪寒、ふるえなどの症状を伴う場合もあります。通常は抗菌薬による治療を行いますが、乳頭から細菌が入って化膿性乳腺炎となると皮膚を切開して膿を出すことがあります。乳腺炎は乳がん発症とは直接関係のないものですが、痛みがないのに乳房が腫れる場合は、まれに炎症性乳がんの場合があるので受診が必要です。

-乳腺線維腺腫

10代後半~40代に多く発生する乳房の良性腫瘍で、ころころとして触るとよく動くしこりが特徴です。しこりが複数できることもあります。乳腺線維腺腫と診断されれば、特別な治療は必要なく、乳がん発症とは関係ありません。女性ホルモンの影響によるものであるため、閉経後は自然としぼんでしまうことが多いのですが、急速に大きくなる場合は切除することもあります。

-葉状腫瘍

初期のものは乳腺線維腺腫に似ているものの、急速に大きくなることが多いのが特徴です。ほとんどは良性ですが、良性の場合も悪性の場合も治療の原則は手術による腫瘍の完全摘出です。 

乳がんのしこりの症状

悪性のしこりである乳がんのしこりにはどんな特徴があるのでしょうか。しこりの大きさとステージの関係や、しこり以外にも注意したい症状について解説します。

・乳がんの進行と症状

乳がんの進行状態は、しこりの大きさとリンパ節への転移、遠隔転移(離れた臓器への転移)の度合いによって診断されます。自分でしこりに気づいて受診する場合はステージ1以上のことが多いです。小さなしこりに気づいたら、できるだけ早く専門医を受診することが重要です。放っておくと、がんが進行し、治療が大変になるばかりでなく、命を縮めることにもなりかねません。
自覚症状はしこりの他、乳房の皮膚に引きつれがある、乳房に「えくぼ」のようなくぼみがある、乳頭の一つの孔(あな)から血性の分泌液が出る、などがあります。また、乳房内にしこりを作らないタイプのがんもありますので乳房がいつもの状態と違うと感じたら、早めに専門医を受診するようにしましょう。

・乳がんのしこりの特徴




乳がんの場合のしこりは一般に硬く、境界がはっきりしないことが多いです。しこりの大きさとステージは一部紐づいているものの、しこりの大きさに加えてリンパ節や他の臓器への転移の状態によって判断されるので、しこりが小さいからといってステージが低いとは一概に言えません。乳房やわきの下で痛みのないしこりに触れたら、専門医を受診してください。

こんな症状にも要注意!

乳がんの初期自覚症状の9割以上は痛みを伴わないしこりですが、乳房内にしこりを作らないがんもあります。先に紹介した炎症性乳がんはそのタイプで、乳房の皮膚が赤く腫れる特徴があります。熱をもつ場合もありますが、痛みはありません。炎症性乳がんの特徴としては、赤く腫れるほか、乳房が急激に大きくなる、わきの下のリンパ節が腫れることが多い、若い人に多い、進行が早い、というものがあります。

ほかにも、乳首の皮膚の表面にがんができた場合、乳首の先が擦り傷のようになることがあります。このがんはパジェット病と呼ばれます。乳がん全体の0.5%程度と発症はまれで、高齢者に多くみられます。いずれの場合も、症状を自覚した場合はすぐに専門医を受診しましょう。

乳がん以外にもしこりができることがある、ということがお分かりいただけたでしょうか。セルフチェックで自分の体の状態やリズムを知っておくことで、異常があった場合にも早い段階で気づくことができます。

PROFILE

【監修】尹玲花先生REIKA IN

mammaria tsukiji院長
女性の役に立ちたいと外科医を志し、聖路加国際病院で乳腺診療に約10年間携わった後、女性のための乳腺クリニックを開設。キャリアを通して、患者さんに『寄り添う』ことをキーワードに診療にあたっている。
https://mammaria.jp/

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