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DATE : 2019.01.24

乳腺症ってどんな症状?乳がんを疑う必要はない?

乳房にしこりができたり痛みを感じたりする「乳腺症」という症状を知っていますか? 乳腺症の特徴や、乳腺症と乳がんとの関係について、医師監修のもと詳しく解説します。

監修:昭和大学病院乳腺外科准教授 明石定子先生 

乳腺症とは?

乳房にしこりや痛みを感じたとき、それは「乳腺症」といわれる状態のことがあります。乳腺症にはどんな特徴があるのか、知っておきましょう。


乳腺症の症状

乳腺症は30~40代の女性に多くみられる乳腺の良性変化の総称で、病気ではありません。乳房の痛みに加えて張り、硬結(こうけつ:やわらかいしこり)、乳頭からの異常分泌(乳頭から透明もしくはまれに茶褐色分泌液が出る)が主な症状です。月経前に症状が強くなり、月経後には落ち着くことが多いという特徴があります。

実際、月経前に胸が張ったり、痛くなったりした経験のある方は多いのではないでしょうか?そういった、月経周期に連動するしこりについては心配ありませんが、月経周期に関係ないしこりがあったり、乳頭から血液が混じった分泌物が出たりする場合は乳がんが隠れている可能性もありますので、専門医を受診しましょう。


乳腺症の原因

乳腺症には主に卵巣から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンが関わっています。これらの影響を受けて、月経周期によって乳腺がかたくなり、しこりや痛みを感じることがあります。このような症状は女性の体に起こる自然な現象であり、症状に個人差はありますが心配はいりません。

また、閉経後に卵巣機能が低下すると症状は自然に消失することもあります。特別な治療の必要はありませんが、痛みが強い場合は鎮痛剤を使うのが一般的です。


乳腺症と乳がんのリスク

一口に乳腺症といっても、単に痛みがあるだけという乳腺症から、乳がん検診で「要精査(要精密検査)」となるタイプのものまで、非常に幅広い範囲を指しており、前者と後者は全然別物です。

乳がん検診で「要精査」となり、再検査でしこりの組織の一部を針で取り出して顕微鏡で観察した(組織生検)結果、乳腺症と診断されるケースもまれにあります。そのなかには、良性のしこりでも細胞が増えるタイプがあります。この場合は数年後に乳がんが発症するリスクがやや高くなる可能性があります。


乳腺症と乳腺炎

乳腺症同様、乳房に痛みやしこりを感じる疾患として、乳腺炎が挙げられます。これは主に授乳期に多く発生する乳房の炎症で、乳汁が詰まることや細菌感染が原因で起こります。赤い腫れや、痛み、膿、しこりなどがみられ、発熱や悪寒、ふるえなどの症状を伴う場合もあります。

通常は抗菌薬による治療を行いますが、乳腺膿瘍になると皮膚を切開して膿を出す処置が必要になるケースもあります。
乳腺炎と乳がんの発症とは直接関係のないものですが、見た目は乳腺炎に似ているけれども乳房が腫れる場合は、まれに炎症性乳がんといって乳房の皮膚が赤く腫れる特徴をもつがんの場合があります。 

乳腺症と乳がん以外で、胸にしこりができることはある?

乳腺症が乳腺の良性変化の総称であり、病気ではないことについて先ほどご説明しましたが、乳腺症以外にも、乳がん以外で胸にしこりができる場合があります。 乳腺炎については前述のとおりで、ほかにしこりをつくる原因に「乳腺線維腺腫」と「葉状腫瘍」があります。

-乳腺線維腺腫(にゅうせんせんいせんしゅ)

10代後半~30代に多く発生する乳房の良性腫瘍で、触るとよく動くころころとしたしこりが特徴です。しこりが複数できることもあります。乳腺線維腺腫と診断されれば、特別な治療は必要なく、がん化することはありません。女性ホルモンの影響によるものなので、閉経が近づくと自然としぼんでしまうことが多いのですが、ごくまれに急速に大きくなる場合があり、その場合は切除します。多発する場合は別の場所に乳がんができるリスクが少し高くなります。

-葉状腫瘍(ようじょうしゅよう)

初期のものは乳腺線維腺腫に似ていますが、葉状腫瘍は急速に大きくなるという特徴があります。ほとんどは良性ですが、良性の場合も悪性の場合も治療の原則は手術による腫瘍の完全摘出です。 

乳腺症と乳がんを見分ける検査

乳腺症のような良性のしこりと悪性のしこり(乳がん)は、どのように見分けるのでしょうか? 検査方法について詳しく解説していきましょう。


マンモグラフィと超音波(エコー)

乳房の検査は、マンモグラフィや超音波(エコー)を使って行われます。高濃度乳房といって、脂肪量に比べて乳腺が多い閉経前の女性の場合、マンモグラフィではがんが認識しづらいことがあります。そういった場合でも超音波(エコー)での検査を行うとマンモグラフィで見つけられなかったがんを見つけられる可能性があります。そのため、閉経前の女性ではマンモグラフィと超音波(エコー)との併用で乳がん検診を行っている自治体もあります。

マンモグラフィも超音波(エコー)も双方メリット・デメリットがありますので、それをよく知った上で、年齢や乳房の状態によって受ける検査を検討しましょう。




乳がん検診で「要精査(要精密検査)」になる=乳がんではありません

乳がん検診で「要精査(要精密検査)」という結果が出ると、もう乳がんであることが確定したかのように思う人がいますが、それは間違いです。再検査の結果、乳がんではないと診断されるケースの方が圧倒的に多く、結果的に問題はないものの検診に引っかかりやすいという体質の人もいます。

乳がん検診受診者のうち、要精査になる人の割合は約8%、要精査になった人のうち、乳がんと診断される人の割合は約4%程度といわれています。つまり、残りの96%の人はがんではありません。検診で要精査といわれても、がんではない人の数の方が多いのです。

ではどうして乳がんではない人も検診で引っかかってしまうのでしょうか。これには個人の体質の問題が背景にあります。検診の画像にどうしても気になるものが写ってしまうという人が一定数いるからです。

その一つに「石灰化」があります。石灰化とはカルシウム沈着の総称で、乳房に限らず体のどこにでも起こることがあります。ほとんどの石灰化は良性のものですが、なかには良性なのかどうか判断がつかないものがあります。こういった場合に要精査となります。しこりについても、明らかに良性なもの、もう少し詳しく調べないとがんか良性か分からないため要精査になるもの、がんを疑うものがあり、明らかに良性なもの以外は要精査となります。また、正常の乳腺組織がたまたま重なって、しこりのように見えてしまうことも多々あります。


もしも乳がん検診で「要精査(要精密検査)」になったら

要精査(要精密検査)といわれたあと、どんな検査が行われるのかについて、簡単にご紹介します。



まずはマンモグラフィと超音波(エコー)による検査を行います。乳がん検診でどちらか(もしくはどちらも)を受けている場合でももう一度行うこともあります。その結果に応じて、組織生検(せいけん)や細胞の検査(細胞診)が行われます。

生検では、しこりの細胞や組織の一部を取り出して顕微鏡で観察し、がんかどうかの診断をします。注射針(細胞診)や、局所麻酔をかけた上で専用の針を乳房に刺して組織を取り出して検査(針生検)するのが一般的ですが、どうしても一部だけでは判断が難しい場合は、しこり全体を手術で取り出し、検査します(摘出生検)。

もし乳がん検診で「要精査」となった場合には、なるべく早く再検査を受けることが重要です。


乳腺症をはじめとした、乳房にしこりができる病気について理解できたでしょうか。セルフチェックで日頃から自分の乳房の状態を知っておくとともに定期的に乳がん検診を受診して、乳がんの早期発見と早期治療につなげましょう。

PROFILE

【監修】明石定子先生SADAKO AKASHI

昭和大学病院乳腺外科准教授。東京大学医学部医学科卒業後、同大学医学部附属病院第三外科、国立がん研究センター中央病院外科、同乳腺外科を経て2010年から同センター乳腺科・腫瘍内科病棟医長。2011年より現職。これまで3,000例以上の手術に携わる。日本外科学会指導医・専門医、日本乳がん学会乳腺専門医・指導医・評議員、検診マンモグラフィ読影認定医師。
http://www.showa-u.ac.jp/SUH/department/list/nyusen/index.html

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