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DATE : 2018.10.22

早期発見で乳がんの生存率は高まる?早期発見が大切な理由とは

これまで何人もの著名人が、メディアを通じて、乳がんの罹患を公表してきました。そのたびに「私も乳がんかも……」と思った人が乳がん検診に押し寄せるという現象が起こります。しかし、日本での乳がん検診受診率は欧米に比べてとても低いことを知っていますか?他のがんに比べて若い世代を襲うことも多い乳がんについて、基本的な知識とともに、医師監修のもと解説していきます。早期発見の大切さを知って適切に乳がん検診を受診するようにしましょう。

監修:mammaria tsukiji院長 尹玲花先生 

働く世代・子育てママ世代に増える乳がん

現在日本では、乳がんにかかる人の数が年々増えていることを知っていますか?まずはどんな年齢の人が乳がんにかかりやすいのか、どうして乳がんにかかる人が増えているのかをみてみましょう。


年代別、乳がんの罹患率

■乳がん年齢別罹患率




一般的にがんは年齢が上がるほどかかりやすくなる病気です。一方で乳がんについては、その発生にエストロゲンという女性ホルモンが深く関係していることから、他のがんとは違って30代後半から罹患(りかん)者数※1が急激に多くなり、閉経を迎える人が増えてくる40代後半にピークに達するという特徴があります。つまり乳がんは、働き盛りや、子育て真っ只中の年代を襲うがんであるといえます。
(※1 罹患者:病気になった人)


■年齢部位別がん罹患数割合(40歳以上)




続いて、年齢別にどの部位のがんにかかる人の割合が多いかをみると、比較的若い年齢では圧倒的に乳がんの割合が多いことはグラフからも明らかです。


乳がんの罹患者が増えたのはなぜ?

がん全体の中で、乳がんにかかる人の数は年々増加しています。その背景にあるのは、日本人女性のライフスタイルの変化です。

先ほど述べたように、乳がんにはエストロゲンという女性ホルモンが深く関わっています。このエストロゲンが多量に分泌される時期が長いほど、乳がんのリスクも高くなるのです。
エストロゲンは初潮の後、子宮や卵巣が成熟するのにともなって分泌量が増え、妊娠・授乳期には分泌量が減少します。つまり、出産回数が多いほど体がエストロゲンの影響を受けることは少なくなるのです。晩婚・晩産が進んでいる現在の日本では、多くの女性が長期間エストロゲンにさらされており、これが乳がん増加の一因ではないかと考えられています。

さらに食生活の欧米化により栄養状態が良くなったことで、初潮が早く閉経が遅い人が増えています。これも、エストロゲンの影響を長く受け続けることとなり、乳がんのリスクを高めているといえるのです。


若年性乳がん

乳がんにかかる人は30代から急に増加しますが、もちろんそれより若い年齢で乳がんにかかる人もいます。35歳未満で発症する乳がんを「若年性乳がん」とよび、乳がん全体の2.7%程度がそれにあたります。
結婚、妊娠、出産の時期と重なるため、治療とライフプランの両立について家族や主治医とよく相談し、納得のできる治療法を選択すること重要です。若年性乳がんについては「35歳以下でも乳がんにかかる?若年性乳がんにについて知ろう」で詳しく取り上げていますので、併せてチェックしてみてください。 

乳がんのステージと生存率

がんは、進行度合いによってステージが定義づけられています。ステージの数字が大きいほどがんが進行した状態であることを表しています。乳がんのステージはどう決められているのでしょうか。ステージによって生存率は違うのでしょうか。以下で解説します。


5年生存率、10年生存率とは?

乳がんにかかる人の数は年々増加しています。ただ、だからといってむやみに怖がる必要はありません。
多くの方が「5年生存率」という言葉を耳にしたことはあるのではないでしょうか。これは、がんと診断された人が5年後に生存している割合のことを意味します(生存している人には再発している人も含まれます。また、事故などがん以外が原因で死亡した人も生存していない人に含まれます)。

■乳がんの5年生存率




上のグラフを見ると、乳がんは他の部位のがんに比べて5年生存率が高いことが分かります。つまり、乳がんは「治りやすいがん」と言うことができるでしょう。

なお、乳がんは5年を過ぎても再発することがあるので、もっと長期にわたった10年生存率も集計されています。10年生存率も、乳がんの生存率は他のがんに比べて高い割合になっているようです。

乳がんの5年・10生存率が高い理由は大きく2つあります。1つ目は、他のがんに比べて早期発見・早期治療が多いということです。日ごろから注意深く自分の乳房を観察していれば、比較的早い段階で異変に気付くことができます。乳がんの自覚症状の9割は痛みのないしこりであり、自分でしこりを感じるくらいだとステージ1以上のことが多いです。さらに定期的に検診を受けていれば、自覚症状が出る前のごく初期ステージ0でも発見することができます。

2つ目の理由は、効果的な薬物療法が登場していることです。世界的に見ても乳がん患者は多いので、新たな治療法や薬の開発が各国で行われており次々に実用化されています。日々進歩する医療の中でも乳がん治療の領域は、特に速いスピードで情報がアップデートされているのです。


乳がんのステージごとの症状と生存率

ここでは乳がんのステージごとにどんな症状が出るのかと、それぞれのステージの生存率について説明します。



乳がんは進行の度合いによって0~4までの5ステージに分けられ、数字が大きくなるほど進行していることを示します。0期の非浸潤がんとは、がん細胞が乳腺の中にとどまっている状態で、この0期と1期を早期がんといいます。検査技術が向上している現在では、ステージ0でも発見できる割合が増えてきています。5年生存率を見ると分かるように、ステージ0や1で発見され、適切な治療を受ければ高い確率で命を守ることができるのです。


乳がんの再発と転移

手術でがんを取り除いて、放射線治療や薬物療法で再発を予防しても、それらの治療を逃れたがん細胞がまた増殖して現れることがあり、これが再発です。再発する場所は手術をした側の乳房のほか、肺や骨や肝臓など、体のさまざまな場所で起こります。手術した側の乳房やリンパ節で起こることを「局所再発」、ほかの臓器で起こる場合を「遠隔転移」といいます。また乳がんの場合は、手術から5年以内に再発することが多いといわれています。
再発・転移が起こった場合、これを根治することは非常に困難です。そのため、糖尿病や高血圧などの慢性病と同様、「上手にがんと共存する」ことが目的となります。 

早期発見が大切な理由

ステージごとの5年生存率の表から分かるように、乳がんは早期に発見できるほど「治りやすいがん」であるといえます。早期発見には検診の受診が欠かせませんが、2013年に実施された国民生活基礎調査によると、日本での乳がん検診受診率は40%程度です。近年受診率は上がっているものの、欧米では70~80%が受診しており、日本の受診率は明らかに低い値です。
受診率が高い国では、乳がんの罹患率は高くても早期発見による早期治療が行われており、乳がんは「治りやすい」という特徴もあることから、死亡率は下降傾向にあります。一方で日本での乳がん死亡率は上昇しているのです。
正しく乳がんを理解し、定期的な検診を受けることで、乳がんは必ずしも恐れる病気ではなくなります。


若い世代がかかることが多く、患者数も増えている乳がんですが、早期に発見して適切な治療を行えば高い確率で命を守ることができるという特徴もあります。早期発見には検診の受診が欠かせません。正しい情報を知り、自分の体と向き合うことが大切です。

PROFILE

【監修】尹玲花先生IN REIKA

mammaria tsukiji院長
女性の役に立ちたいと外科医を志し、聖路加国際病院で乳腺診療に約10年間携わった後、女性のための乳腺クリニックを開設。キャリアを通して、患者さんに『寄り添う』ことをキーワードに診療にあたっている。
https://mammaria.jp/

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