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DATE : 2018.10.22

乳がんの種類ってどんなものがある?分類・種類ごとの治療法について

乳がんはいろいろな切り口で分類されます。一般にはステージ分類が最もなじみがあると思いますが、最近はステージ分類よりも、がんそのものの性質による分類の方が、治療法の選択や再発の危険性の推測などにおいては重要であると考えられるようになっています。どんな分類があるのか、医師監修のもと詳しく解説していきます。

監修:mammaria tsukiji院長 尹玲花先生 

乳がんの分類

乳がんの分類を解説する前に、乳房の中にはどんな器官があるのかを解説します。その上で、乳がんがどんな場所に発生するのか、乳がんにはどんな分類があるのかを知りましょう。

乳房の仕組みと乳がんの発症

■乳房の仕組み



乳房には、母乳を分泌する器官があり、乳腺とよびます。乳腺は、母乳を分泌する小葉(しょうよう)という器官と、母乳を小葉から乳頭まで運ぶ管である乳管とをまとめた名称です。
乳がんは、乳房にできるがんのことですが、正確には「乳腺にできるがん」のことをいいます。乳腺は、乳頭を中心にしてわきの下まで放射状に広がっていますので、その範囲ならどこにでも乳がんが発生する可能性があります。乳がんの90%は乳管に発生する乳管がんで、小葉に発生する小葉がんは乳がん全体の5~10%といわれています。

乳がんの分類

乳がんはいろいろな切り口で分類することができます。一般的に耳にすることが一番多いのは「ステージ分類(TNM分類とも呼ばれる)」ではないでしょうか。その他にも「組織型」「サブタイプ分類」などがあります。

ステージ分類は、0~4の5段階で分類します。これは、その患者さんが初めてがんであると診断されたときのがんの状態を元に判断されるもので、その後病状が悪化したとしても、それによってステージが変わるわけではありません。
詳しくは、「乳がんのステージ(病期)が示すことは?症状や生存率などを知ろう」をチェックしてください。

乳がんと診断された著名人などがメディアで自分のがんのステージに言及したりすることがあるため、どのステージなのかを気にする人が多いと思いますが、最近はステージ分類よりも、がんそのものの性質による分類の方が、治療法の選択や再発の危険性の推測などにおいては重要であると考えられるようになっています。 

乳がんの組織型とは?

次の分類は乳がんの組織型です。どのように分類しているのか、みてみましょう。

非浸潤がんと浸潤がん

乳がんは、がんの広がりによって、「非浸潤がん」と「浸潤がん」に分けることができます。乳管や小葉で発生したがん細胞が乳腺の組織内にとどまっている状態を「非浸潤がん」とよび、理論上その部分を切除すればリンパ節や他の臓器への転移の心配はないと考えられます。ステージ0がこれにあたります。

この段階で見つからず、がん細胞の増殖が続くとがん細胞が乳腺の壁を破って周辺の組織に広がっていきます。これが「浸潤がん」です。自分でしこりに気がつくくらいのがんはほとんどが浸潤がんで、この場合、がん細胞が乳房内の血管やリンパ管に入り込み、他の臓器に転移する可能性が出てきます。
浸潤の有無と、発生した場所によって、以下の4種類に分類することができます。

・非浸潤性乳管がん
・非浸潤性小葉がん
・浸潤性乳管がん
・特殊型(10種類ほどある) 

乳がんのサブタイプ

乳がんが増殖・進行するスピードや、女性ホルモンの影響の受け方などは、個々の乳がんによって異なります。近年、がんの性質に着目して分類するというサブタイプ分類が世界的に広がっています。がんのステージと合わせて、適切な治療方針を決めていくための重要な目安とされています。

がんの性質を確かめる方法

乳がんと診断されると、しこりや分泌物の組織を観察し、乳がんの種類や性質、広がり具合や進み具合を診断する「病理検査」が行われます。そのとき以下の「ホルモン受容体の有無」「Ki67の程度」「HER2の過剰発現の有無」を検査してサブタイプ分類を行い、適切な治療方針を決定していくことになります。それぞれの項目についてみていきましょう。

-ホルモン受容体の有無

ホルモン受容体とは、エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体のことで、乳がんにこのどちらかがあれば、ホルモン受容体陽性となります。ホルモン受容体陽性がんでは、女性ホルモンの刺激を受けて増殖します。

-Ki67の程度

一般的に、細胞が増殖する能力が高いがんは低いがんに比べて悪性度が高く、抗がん剤が効きやすいといわれています。Ki67は、細胞増殖の程度を示す指標となるたんぱく質です。Ki67が多くみられるがんは増殖する能力が高いと考えられます。しかし、Ki67の判断基準についてはまだ一定の決まりがなく、日本をはじめ世界中で研究が行われているところです。

-HER2過剰発現の有無

HER2というたんぱく質が過剰に現れていると、細胞増殖の制御がきかなくなります。HER2たんぱく質が過剰に現れているがんは、そうでないものに比べて転移・再発の危険性が高いと考えられています。

乳がんのサブタイプとは



ホルモン受容体の有無、Ki67の程度、HER2過剰発現の有無によって、乳がんは4つまたは5つのサブタイプに分類されます。

-ルミナルAタイプ

ホルモン受容体陽性、HER2陰性、Ki67低値のものがルミナルAタイプです。女性ホルモンの影響で増殖するため、ホルモン療法が効果的です。リンパ節転移の状況とがんの大きさによっては、抗がん剤での治療を追加することもあります。

-ルミナルBタイプ

ホルモン受容体陽性で、HER2もしくはKi67のどちらか一方でも発現が高いものをルミナルBタイプといいます。ルミナルBタイプはHER2の発現によってルミナルBタイプ・HER2陰性とルミナルBタイプ・HER2陽性に分けられます。

-HER2タイプ

ホルモン受容体陰性、HER2陽性をHER2タイプといいます。ホルモン療法ではなく、HER2に的を絞った薬(分子標的薬)と抗がん剤での治療を行います。

-トリプルネガティブ

ホルモン受容体陰性、HER2陰性をトリプルネガティブといいます。手術などの局所療法に加え、抗がん剤のみで治療を行います。


乳がんの分類について、知ることができたでしょうか。一口に乳がんといってもさまざまなタイプがあり、タイプによって適切な治療法は異なります。がんのタイプを正確に知ることが重要です。

PROFILE

【監修】尹玲花先生REIKA IN

mammaria tsukiji院長
女性の役に立ちたいと外科医を志し、聖路加国際病院で乳腺診療に約10年間携わった後、女性のための乳腺クリニックを開設。キャリアを通して、患者さんに『寄り添う』ことをキーワードに診療にあたっている。
https://mammaria.jp/

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