MONEY : お金
DATE : 2023.10.31
vol.3 知らないと損するかも!実はみんなもらってる「ケガや病気のときに申請すれば戻ってくるお金」の話
ケガや病気をしたとき、どうしても気になるのがお金のこと。ただでさえ不安なときに、できることならお金の心配はしたくないですよね。そんなときに頼りになるのが「高額療養費制度」。年齢や収入に応じて医療費の自己負担上限額が決められていて、それ以上にかかった分は払い戻される制度です。
「夢を叶えるために役立てたい、申請すればもらえるお金」に続き、今回は「もしものときに申請すればもらえるお金」について、FP風呂内さんにお聞きします。
今回教えてくれるのは……
風呂内 亜矢(ふろうち あや)さん
初心者にもわかりやすいお金の話と、明るく優しい人柄で、テレビ・雑誌・Webでひっぱりだこ。20代のとき、貯蓄80万円で新築マンションを購入したことをきっかけにお金について学び始め、FP資格を取得したという異色の経歴の持ち主。最新書籍「超ど素人がはじめる資産運用 第2版」(翔泳社)。
ファイナンシャルプランナー風呂内亜矢オフィシャルサイト
払い過ぎた医療費が戻ってくる「高額療養費制度」って知ってる?
ケガや病気をしたとき、真っ先にお金の不安を感じたという声は多く聞かれます。手術など大がかりな治療が必要になったとき、どうしても費用が気になりますよね。
でも実は、健康保険が適用される治療費の自己負担額(病院の窓口で支払う金額)には上限があることをご存じでしょうか?具体的にいうと、「高額療養費制度」を利用すれば、年齢や所得に応じて決められている上限額を超えた分の治療費は戻ってきます。高額な治療費が必要な場合、治療に100万円かかったら3割負担で30万円を払わなければいけない……とはならないんです。
そして、高額療養費制度と合わせて知っておきたいのが、「限度額適用認定証」です。これは、加入している健康保険組合に事前に申請しておくことでもらえる書類。高額療養費制度だけを利用した場合は、窓口で治療費の3割を一時的に払ったあとで払い過ぎた分が戻ってきますが、限度額適用認定証を病院に提出すれば、窓口での支払いが自己負担分だけで済みます。
また、マイナンバーカードを健康保険証として使っている方が、マイナンバーカードの保険証利用に対応している医療機関を使った場合は、限度額適用認定証がなくても、限度額を超える支払いが免除されます。
私の医療費の自己負担上限額はいくら?シミュレーションしてみよう
出典:高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から) 厚生労働省保険局
あなたの年収が約370万円未満、かつ住民税を支払っている場合は、1カ月あたりの自己負担上限額は一律5万7,600円です。
年収が370万円以上の場合は、収入に応じて上の表に当てはめて計算します。
例えば、32歳で世帯年収が380万円の単身女性が事故に遭ってケガをし、入院を伴う治療を受けたとします。治療費の総額は150万円。この場合、自己負担額は、
80,100円+(1,500,000円-267,000円)×1%=92,430円
※69歳以下の人は同じ計算式が適用されます。
計算式に当てはめると、このケースの自己負担上限額は、ひと月あたり9万2,430円ということがわかります。もし限度額適用認定証を提出すれば、医療費について窓口で払うのは9万2,430円だけ。限度額適用認定証を申請しなかった場合は、治療費総額の3割にあたる45万円を一度支払い、後日(2~3カ月後)上限額を差し引いた35万7,570円の払い戻しを受けることになります。
ただし注意したいのは、「自己負担上限額はひと月ごとに定められている」という点。例えば8月27日に入院して手術などの治療を受け、9月5日に退院したとしましょう。すると、8月と9月、ふた月分の自己負担上限額の範囲で支払う金額が計算されます。もしも入院時期を選べるのであれば、月をまたがないように調整できるとベターです。また、医療費以外で個室を希望した場合などの「差額ベッド代」などは、上限額とは別にかかります。
会社員の方は、加入している健康保険の付加給付もチェック!
会社の健康保険の場合、「付加給付」と呼ばれる独自のサポートを受けられることもあります。これは、福利厚生として独自にひと月あたりの医療費の自己負担上限額を決めているもので、法定の高額療養費制度よりも低い金額になっていることがあります。
先ほど例に挙げた30代女性の自己負担上限額はひと月あたり9万2,430円でしたが、仮に勤務先の健康保険が上限額を2万円としていれば、差額の7万2,430円も健康保険から支給されるのです。
その他にも、入院中の食事について一部支給があったり、傷病手当金(病気やケガで会社を4日以上連続で休んだ際、4日目以降健康保険から支給される給付金)よりも手厚く有給休暇と同じくらいの金額を支給したりするところもあります。
ケガや病気のときは、行政のサポートと共に勤務先の制度も確認しよう!
医療費控除
医療費控除は、確定申告で一年間にかかった医療費を申請すると、かかった医療費の一部が所得から控除されて、所得税・住民税が安くなるというものです。控除金額は、以下のような計算式で算出します。控除額 = 1年間の医療費 − 保険金などの補填金 − 10万円(その年の総所得が200万円未満の場合はその5%)
※控除額の上限は200万円
上記の計算式で算出した控除額に、課税所得(所得税の課税対象となる所得)に応じた税率をかけた金額程度が払い戻されます。住民税については、課税所得×10%にあたる金額が、その年に支払う本来の住民税より安くなります。
参考:国税庁ホームページ No.2260 所得税の税率
セルフメディケーション税制
一方、セルフメディケーション税制は2017年にスタートした制度で、健康診断や予防接種を受けた方が、1年に1万2,000円超の「スイッチOTC医薬品(※)」などの対象の商品を購入して確定申告をした場合、上限を8万8,000円として所得から控除されるというものです。(※)医療用から一般用に転用された医薬品のこと。厚生労働省が指定した特定の有効成分が含まれているものが対象で、該当する商品は以下のHPで詳細を確認できます。また、店頭やレシートにて★や●などの印で確認することもできます。
‐厚生労働省ホームページ
≫2 セルフメディケーション税制対象品目一覧
■スイッチOTC 対象品目一覧
■非スイッチOTC 対象品目一覧
これらの他にも、医療用ウィッグの購入費を助成してくれる自治体が増えてきているなど、受けられるサポートはさまざまあります。「病気やケガをしたらたくさんお金がかかるのは当たり前」と最初から思い込んでしまうのではなく、減税や補助金などのサポートをしてくれる制度があるかどうか、勤務先の制度を含めまずは調べてみましょう。
次回は、vol.4 「健康に自信があれば保険に入らなくていい」って本当?という、素朴な疑問にお答えします。