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WORK : 仕事

DATE : 2024.05.27

ロールモデルが見つからない。“働きにくさ”の原因はどこにある?

「女性が活躍できる社会に近づいている」といわれても、首をかしげてしまう方は多いのではないでしょうか。そこで今回は、ダイバーシティや女性リーダー育成の専門家である川嶋さんと、働く女性たちの悩みの原因や社会の変化について考えます。キャリア形成のスペシャリストが見る日本の現在とこれから、そして私たちが今できることとは。

今回教えてくれるのは……

取材・監修:Institute of Women’s Leadership 株式会社 代表取締役
ダイバーシティ・女性リーダー育成専門家
川嶋 治子(かわしま はるこ)さん


静岡県清水市長秘書として、数多くの国内外トップリーダーへの対応、日韓FIFAW杯をはじめとしたグローバル案件を経験。2007年からは上場企業の経営幹部育成を手がけ、2014年には欧州の教育機関日本代表に就任。外資系企業の女性役員育成に従事するとともに、同機関の日本市場進出をリード。2015年にはInstitute of Women’s Leadership社を設立し、代表取締役に就任。女性リーダーや起業家の育成を支援するほか、Diversity, Equity &Inclusionに関する官公庁・上場企業のアドバイザリーや企業の社外取締役、顧問も務めている。
https://iwl-inc.jp/  

私たちの“働きにくさ”が消えない理由と解消のヒント


誤解を恐れずにいえば、これまでの“社会や会社におけるマジョリティ”は、多くの場合男性でした。現在はマジョリティのためにつくられてきた仕組みを少しずつ変え、女性や多様な人々が働きやすい環境づくりを進めている真っ只中にあります。そんな今だからこそ抱えがちな悩みについて、原因や解決のヒントをご紹介します。


【悩み 1】ロールモデルが見つからない

日本において女性活躍の重要性が叫ばれるようになったのは最近のこと。「女性リーダー」の数は、いまだ圧倒的に少ないのが現状です。その中で、仕事観や目指すキャリア、家庭環境など、すべての要素が自分とぴったり合うロールモデルを探すのは至難の業。確率でいえば、人生のパートナーと出会うより難しいと思います。

そこで役立つのが、「パーツロールモデル」を探すという考え方。ひとりの完璧なロールモデルは求めず、さまざまな人の「素敵だな」と感じるポイントを参考にして、自分のスタイルをつくるのです。

一部分に共感や尊敬ができればいいと考えれば、お手本にしたい方はたくさん見つかるはず。身近な人に限定する必要はありません。たとえばインタビュー記事を読んで「こうなりたい」と感じたなら、著名人もパーツロールモデルになりえます。「素敵だな」と感じるのは、自分のセンサーが反応した証拠。自分を信じて、自身の理想のスタイルをつくってみてください。


【悩み 2】出世したくない(役職が上がることを喜べない)


社会全体に女性のリーダーを増やそうとする動きがある一方で、現場とは温度差があるケースも。実際にリーダーに選ばれるといまだに周囲から嫉妬されたり叩かれたり、同性からも「あなたは私とは違うから」と距離をとられたり、関係性が変わってしまったり……。そんな声はとても多く耳にします。社会が変わりはじめたとはいえ、今なお孤独を感じながら働いている女性はたくさんいらっしゃいます。

そんな中で「出世したくない」と感じる方がいるのも事実。実際に私のところにも、企業の役員や管理職から「女性を管理職にしたいけれど、当の女性が昇進したがらない」という相談がよく寄せられます。
私はそんな相談に対して「“女性が昇進したがらない”ではなく、“女性が昇進したいと思えない状態にしてしまった会社のあり方を変えるべき”と考えましょう。企業の風土なのか、評価制度なのか、会社にある原因を探りましょう」と話しています。

先進的な企業は着実に自社のあり方を見直しており、今、社会は変革の真っ只中。着実に改革は進んでいます。日本はこれからもっと女性が働きやすい社会に変わります。


【悩み 3】仕事も家事も育児もがんばりたいのに思い通りにならない


日本の働く女性たちからは、必ずといっていいほど「仕事と家事・育児の両立が難しい」という声が上がります。1日は24時間しかなく、働いていれば起きている時間の大部分を仕事に使っているのですから、ひとりで子育てを含む家庭のことまで完璧にやろうとするのはとても負担が大きいですよね。

海外では「ホームチームをつくる」という考え方が浸透しています。仕事をチームで進めるように、家庭でも役割分担をして、みんなで運営するんです。外部の力を活用することも重要なポイント。共働きの家庭では、いくらホームチームで回そうとしても、家族だけでたくさんの時間をつくれるわけではありません。そこで、家事代行やシッターをはじめとした外部の力までを含めてホームチームにしてしまうのです。

そうやって考え方を変えると、心に少し余裕ができて、家庭の雰囲気もよりよくなるのではないでしょうか。人の力を借りて、家族との幸せな時間を大切にする。働く女性にとって大切な考え方だと思います。外部サービスの利用も、月に1、2回ならそこまで大きな出費にはならないはず。ぜひ積極的に活用してください。  

D&IからDE&Iへ。女性は今よりも働きやすくなる?


近年、社会に浸透してきた「ダイバーシティ&インクルージョン=D&I」という考え方。「ダイバーシティ」は多様性を指す言葉。「インクルージョン」は包括を意味します。性別や年齢などの多様性を認識し、誰もが“自分は受け入れられている”と感じながら力を発揮できる環境を目指すものです。
しかし、ただ多様性を受容するだけでは、みんなが力を発揮できる状況をつくるのは難しいのが現実。なぜなら、社会や会社はマジョリティに合わせてつくられてきたからです。

そこで生まれたのが、「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン=DE&I」。「エクイティ」は「公平性」を意味します。スタート地点から不均衡があることを認識し、一人ひとりの立場に立って働きやすい環境を整えよう、多様性を受け入れたうえで属性ごとに必要なサポートを提供しよう、という考え方です。
日本でも現在、DE&Iに注目が集まりつつあり、さまざまな場所で女性に合わせたサポートが検討・実施されています。


「女性をひいきしている」という声も耳にするけれど……

この動きに対して「今度は女性ばかりひいきしている」「女性だけ特別扱いするのは逆差別だ」という声も残念ながら聞かれます。

これは、「エクイティ」について正しく理解できていないために起こる現象。誰もが同じスタートラインに立てる社会をつくるには、DE&Iへの正しい理解を促す必要があります。  

環境の変化に向けて私たちが備えておくべきこと


「エクイティ」の大切さを理解し、女性たちの働きやすさのために制度や風土の変革に取り組む企業は着実に増えています。ゆっくりではありますが、日本はDE&Iを考えた社会に向けて舵を切っているというのが私の実感です。

次の時代に向けて私たちができる準備は、自分軸を明確にし、自分に勇気やヒントを与えてくれるパーツロールモデルから学び、自分の理想のスタイルを創るために遠慮も躊躇もしないこと。性別に関係なく、一人ひとりがのびのびと活躍する未来に備えて、ぜひ今から準備を進めてください。

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