MYSELF : 自分
DATE : 2022.11.11
モヤモヤを抱えていませんか? 「自分にとって嫌なこと」を知る必要性
仕事をしているとき、家族と一緒にいるとき、ひとりのとき。「現状に大きな不満はないけどモヤモヤする」と感じることはありませんか? また、そのモヤモヤを“見ないフリ”してはいないでしょうか?
「モヤモヤした気持ちを知ることは、幸せな選択ができるようになるための重要な一歩になります」と話すのは、キャリアコンサルタントの岩橋さん。嫌なことと向き合うことの意味や効果について教えてもらいました。
今回教えてくれるのは……
キャリアコンサルタント
岩橋ひかりさん
お茶の水女子大学を卒業後、株式会社セブン銀行に入社。広告、企画部門を経て、人事部門で新卒採用やダイバーシティ推進に従事。その後第2子を出産し、2017年には株式会社MYコンパスを創業。
生き方に働き方を合わせる「ライフキャリア思考」を提唱し、国内外1万人以上の女性を支援。企業での講演やメディアでの連載、支援者育成など幅広く活動中。著書に『最強のライフキャリア論。』(時事通信社)がある。
https://mycompass.co.jp/
日常的に「モヤモヤ」を感じていませんか?
私はこれまで1万人以上の女性のキャリアコンサルティングを行なってきましたが、その中で「モヤモヤした気持ち」を抱えている方はとても多いことを実感しています。
では、「モヤモヤする」とは一体どんな状態でしょうか? それは「自分の気持ちや考えを言語化できていない状態」です。心の内を表層的にしか分析できておらず、モヤモヤの正体や、それに対する心の変化を自覚できていない。結果的に、「モヤモヤするけれど、どうしたらいいかわからない」という悩みが発生します。
モヤモヤを放置すると、自分の気持ちすらわからなくなってしまう
モヤモヤを放置する、すなわち気持ちを封じこめるクセがつくと、その変化に鈍感になっていきます。そのうちに自分がどうしたいかがわからなくなり、ライフデザインができないどころか、たとえば「ランチに何を食べるかさえ決められない」状態に。選択に必要な自分の意志を見失い、思考が停止してしまうのです。まずは「自分にとって嫌なこと」を自覚しよう
モヤモヤを解消するために私が推奨している方法が、嫌なことを言葉にして理解すること。自分の気持ちを客観的に把握でき、スッキリするんです。
また、嫌なことと丁寧に向き合う中で、「思い込み」が多いことにも気がつくはず。私たちは無意識のうちに経験や知識、価値観などに基づく思い込みを抱えてしまっています。たとえば、誰にもいわれていないのに「私は母親だからこういうことを求められている」と考えてしまう、といった具合です。そうした思い込みを取り払うことも目的です。
そしてこの作業は、なりたい自分を叶える第一歩になります。なぜなら、ライフキャリアプランを立てるにあたっては、「将来どうなりたいか」を自分の言葉で解像度高く語る必要があるから。「幸せになりたい」などの漠然としたものではなく、具体的にどんな姿になりたいかを描けなければ、いつまでも実現はできません。そのために、この作業の中で、気持ちや考えを言語化する力を磨きましょう。
好きなことも嫌なことも、あなたの個性
嫌なことを自覚する過程で、苦しさを感じてしまう方がいるかもしれません。でも、嫌なことを決して悲観的に捉える必要はありません。好きなことと同じように、あなたの主観によって生まれる立派な個性です。たくさん出てくるすべての嫌なことは、尊重すべき個性が形になったもの。ぜひネガティブにならずに向き合ってください。嫌なことと向き合うための具体的なステップ
では「嫌なことと向き合う」とは、具体的にどんな方法で行えばいいのでしょうか。
以下の3つのステップを踏むことで、モヤモヤはかなりクリアになり、本心を理解する力が身につきます。
【STEP1】 嫌なことを100個書き出す
まずは嫌なことを100個書き出します。「家事が嫌」などの大雑把な表現ではなく、「洗濯物を畳むのが嫌」「空になったシャンプーを詰め替えるのが嫌」というように、細かく洗い出してください。もし筆が止まってしまう場合は、次の順番で考えてみましょう。
1 日常のこと
2 仕事のこと
3 家族のこと
4 自分のこと
5 社会のこと
この枠組みはあくまでヒントです。それぞれにいくつ考えなければいけないとか、すべての要素を網羅しなければならないといったことはありません。リラックスして、自由に取り組んでください。
STEP1のポイントは、嫌なことの解決策は一切考えないこと。多くの方は「どうしたら解消できるか」などと頭で考えるクセがついていますが、まずは素直な心の内を全部書き出してしまいましょう。あくまで「自分が嫌だと思っていることを自覚する」ことがSTEP1のゴールです。
【STEP2】 「自分でコントロールできること」と「できないこと」に分ける
次に、100個並んだ嫌なことを、自分でコントロールできるものとできないものとに分類しましょう。そして、コントロールがきかないことは一旦潔く諦めて、できることに集中します。ここで注意したいのが、自分の捉え方はコントロールできるということ。たとえば、出産を機に時短勤務になり、業務内容も簡易になったとします。それをある人は「惨めだ」と感じ、ある人は「仕事と育児と無理なく両立できて良かった」と感じる。決してどちらが正解という話ではなく、捉え方は人によって違い、意識すれば自分のなりたいように変えられることを知っておいてもらえたらと思います。
【STEP3】 特に嫌な5つを選び「なぜ嫌なのか」を考える
次に、「自分でコントロールできること」の中から特に嫌なことを5つ選び、その理由を探っていきます。本心をより深く理解できるとともに、自分がストレスを感じることの傾向が見えてきて、それは「どんな生き方を実現したいか」のヒントにもなるでしょう。100個の嫌なことやその理由について、人に共有することもおすすめです。他者の考え方に触れ、自分との違いを知ることで、「自分らしさ」に気づけることもあります。
ただ、先ほども触れたように、人の考え方に優劣はありません。あなたを批判したり、「こうしたほうがいい」とアドバイスをしたりする相手への共有は控えましょう。
世間的に良いことが自分に良いこととは限らない
嫌なことを知ると、上手にライフデザインができるようになる
「嫌なこと」は、示唆深い情報です。ご紹介したやり方で向き合えば、どんどん本心が明確になります。すると、意思決定が容易になったり、主体的に行動できるようになったりするでしょう。当たり前のことですが、あなたの幸せはいつだってあなたが決め、つくるもの。年齢を重ねると忘れてしまいがちなので、嫌なことを自覚する中で思い出してください。
そんな嫌なことと向き合う作業は、月に1回くらいの頻度で行うのがおすすめ。「月末」「生理のとき」「新月のとき」など、ご自身が意識しやすいタイミングで、心に積もったホコリを落とす感覚で取り組めるといいでしょう。
そして、次なるステップとして、ライフデザインにも取り組んでもらえたらと思います。言語化力が磨かれた状態なら、「なりたい自分」を具体的に描けるはず。具体的な実践方法は別の記事でご紹介しているので、併せてご覧ください。
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